基盤研究
富士山の火山活動に関連する地下水変動観測と火山噴出物の特性に関する研究
(旧題名;富士火山北麓における地下水変動観測と地層の水理特性に関する研究)

研究代表者
内山 高(地球科学研究室)
共同研究者
都留文科大学、(独)防災科学技術研究所
研究協力
福島大学、山梨大学
研究協力者
山本真也、笠井明穂(地球科学研究室)
研究期間
平成22年度~27年度

研究背景・ニーズ

一般的に火山には豊富な水量を持つ湧水があることが多く、その山体内部には大量の地下水が貯えられている。また、火山噴火は、噴出するマグマが同じような性質であっても、地下水の影響により噴火様式が大きく異なることがある(鍵山、2001)。火山地帯の地下水観測は、1986年伊豆大島の噴火前後に本格的な観測が始まり、それらの変化が火山活動に関連していることが明らかにされつつある。また、2000年有珠火山や伊豆三宅島の噴火の前後にも、地下水位・水温および水質の変化が観測され、火山活動の前兆現象に関わる変化および噴火後の変化が明らかにされている。このような地下水の諸変化は火山地帯においては火山活動との関連が指摘されており、地震および地盤変動と併せて噴火の前兆現象および噴火後の推移を予測する上で重要な観測項目とされている。しかし、現在のところ富士山北麓において火山活動との関連で地下水の観測はどの研究機関においても実施されていない。

地球科学研究室は、プロジェクト研究「富士山の火山活動の関する研究(平成14年度~平成18年度)」、特定研究「富士山火山防災における観測および情報の普及に関する研究」(平成19年度~平成21年度)を実施してきており、平成16(2004)年には研究所に併設された富士山火山防災情報センターを分担している。さらに、平成24年6月8日に設置された山梨県・静岡県・神奈川県3県富士山火山防災対策協議会においても本研究所は協議会、各県コアグループ、3県コアの構成員となった。このように、環境科学研究所は、富士山麓に位置する地元研究機関として、富士山の火山防災、噴火現象に関する知識や必要な防災対策に関する情報提供および富士山に関する自然環境の基礎知識の教育啓発を行う機関して重要性が増してきている。

研究目的

富士山の地下水変動観測から変動特性および要因を明らかにし、火山噴火に関係する前兆現象を捉える上での基礎資料を得ることを目的とする。また火山噴出物(テフラと溶岩流)の特性を明らかにし、火山活動(噴火タイプ)と地下水の影響関係をあきらかにすることを目的とする。

研究計画

  1. 地下水位観測体制強化と常時観測
    • 地下水位観測体制強化(H22-24、3カ年で整備)
    • 地下水変動に関する常時観測(H22-27)
  2. 地下水変動の把握と要因の分析(H25-26)
    • 地下水変動をもたらす要因(自然的及び人為的要因)の解明
  3. 火山噴出物(テフラと溶岩流)の特性の解明(H26-27)
    • テフラと溶岩流の化学的分析
    • テフラと溶岩流の年代測定
  4. 火山活動と地下水との相互の影響の解明(H27)

期待される研究成果

  • 火山防災において、地下水位変動をモニターとして、マグマの上昇・移動による地殻変動をとらえることで、噴火現象への影響を評価することが期待される。
  • 地下水文区の水理特性を把握することにより、富士北麓に多数あり水源等に利用されている既設井戸が、モニタリング用井戸としても利用可能となり、現在より精緻な地下水観測網が設置できることが期待される。