プロジェクト研究
山梨県内の湖沼堆積物に記録された環境情報の時空分析

研究代表者
輿水達司(山梨県環境科学研究所 地球科学研究室)
共同研究者
内山高(山梨県環境科学研究所 地球科学研究室)
杉田幹夫(山梨県環境科学研究所 環境計画学研究室)
県衛生公害研究所、山梨大学、東海大学、金沢大学、信州大学、東京大学
研究期間
平成19年度~23年度

研究目的

湖底堆積物には過去から現在にわたる環境変遷の情報が比較的連続して記録されている。そこで、富士五湖地域のみならず甲府盆地側における湖沼も含む堆積物を対象に、そこに記録されている自然および人為環境の変遷につき、歴史的ならびに地域的な視点からの検討を行い、将来の山梨県の環境予測に関する基礎資料とする。

研究目標

  1. 山梨県内の湖沼堆積物の分布状況の把握
  2. 湖沼堆積物中の年代的解明
  3. 湖沼堆積物中に含まれる広域テフラの同定
  4. 湖沼堆積物中の無機化学組成の変遷解明
  5. 湖沼堆積物中の有機化学組成の変遷解明
  6. 気候変動等の自然環境変遷史の詳細解明
  7. 人為影響の変遷史の解明
  8. 地殻変動等の変遷史の解明

全体の研究計画

近年の地球温暖化等をはじめとする環境問題の解明にあたり、観測記録などを基に過去からの変化を基に将来対策を試みる場合、よりどころとする記録が数十年、長い場合でも百年程度といった短期間に制約されるため、精度の高い将来予測を行うことを、しばしば困難にしている。これに対し、湖底堆積物や海洋底堆積物を材料に検討した場合、より広範な年代幅につき環境変化の記録を読みとることが可能となる。そのため、湖底堆積物等をボーリングコアとして採取し、この中に記録されている各種の環境情報を解析し、さらに歴史的変化を明らかにする研究が国の内外において活発に実施されるようになってきた。このような背景から、先行プロジェクト研究において、富士五湖湖底堆積物をボーリングコア採取し、富士山の過去からの活動につき地域特性をはじめ火山防災上重要なデータを明らかにした。さらに、富士五湖地域における過去からの大気環境等の歴史的変遷の情報を明らかにできた。さらに、地球規模の環境変化につき概ね10年周期の規則性についても新たに見出した。

そこで、本プロジェクト研究においてはこのような研究方針を富士山麓地域のみならず、甲府盆地一帯における湖沼の堆積物に分析対象を広げ、堆積物中に記録されている自然災害の情報をはじめとする環境変遷の歴史的解明を図り、将来の山梨県における環境予測の基礎資料を構築する。

具体的には、富士山麓地域においては富士山の火山活動の地域特性が把握でき、一方、甲府盆地側においては盆地周辺部の地震活動等の記録が湖沼堆積物から読み取ることができ、かつ航空写真における地形判読を加味することにより、地殻変動の空間的広がりも把握できる。このようなデータ構築により防災上重要な貢献が可能となる。さらに、県内の大気環境の歴史的変遷を湖沼堆積物から読み取り、これに自動車排出粒子データなどを加味して時空的な検討をすることにより、将来環境に対する基礎資料が提供できる。

初年度には富士五湖地域において、二年度には甲府盆地側の中で盆地西部から北西部地域において、三年度にぼ盆地東部から北東部地域において、四年度には甲府盆地中央部から南部地域において、試料の採取および分析を実施する。五年度において全体をまとめる。