巻頭言

創刊に当たって〜自然と人との共生を目指して〜


所長 入來 正躬


著者近影

 本年4月に山梨県環境科学研究所が開設されました。山梨県では、住みよい県をめざした幸住県計画が策定され、その目標に向けての努力が重ねられています。研究所も、この計画に沿った拠点の一つとして設立されました。

 皆様も御存知のように、現在の環境問題は地球規模での真剣な検討が必要とされています。また、地球温暖化の問題に示されるように、次の点で従来の公害の問題とは異なっています。

 @ 地球規模の原因によって、地球規模の被害が引き起こされます。ある狭い地域だけの問題ではないので、国際的な協同研究とそれに基づく地球規模での対策が不可欠です。

 A 我々の世代が被害をうけるのではなく、次の世代が被害をうけなければなりません。自らのいたみとして感ずることのない問題にどれ位真剣に取り組むことができるのか、人間の英知が問われています。

 B 我々のすばらしい“文化的生活”を支えてきた科学技術に不可欠なエネルギーのもとである石油、石炭などの使用が原因となっています。従って我々は科学技術そのものを、さらにそれに支えられている生活そのものを見直す必要があります。

 このような地球規模の環境問題を検討するために、国際的な体制による研究が行われ、成果をあげつつあります。しかし、それぞれの地域ごとの状態や問題への関与は、このような地球規模の研究では、充分に解明することができません。各地域の特徴に基づく、地球規模での研究成果をふまえた検討が必要です。“地球規模で考え、地域で行動する”ことが必要です。

 最近では、いろいろの特徴をもった地域単位の研究の重要さが認識され、各地域単位を結んだネットワークが検討されています。本研究所は緑に恵まれた山梨県の特徴に基づいて、人と自然の共生をメインテーマとして研究します。その成果を、山梨県民のために役立てると同時に世界に発信して地球規模での対策にも役立てたいと願っています。 私は人の英知を信じています。人類は今までにも厳しい環境を生き抜いてきました。今回の環境問題も今までに経験したことのない問題ではあっても、人の英知で乗り切ってゆけるものと信じています。

 そのためには、現状を正確に把握し、それに基づいて将来を正確に予測し、対策を立てることが必要です。しかし、それと同時に重要なことは、県民一人一人に環境の問題の重大さを認識して頂くことです。研究所には皆様方の環境問題に対する理解を深めるのに役立てるために、環境研究部門とは別に、環境教育部門、環境情報センター、交流の場を設けてあります。これらの部門に係る施設は土・日、祝日も開放し、各種事業を実施しております。是非御利用下さい。

 最後に皆様方の御支援をお願いして、御挨拶といたします。

(いりき まさみ)

竣工式
竣工式 テープカット(H9.4.30)

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