研究室紹介

『緑地計画学研究室』

地域構造の変容をとらえ再構成をめざす

池口 仁・藤咲雅明

 緑地計画学研究室は、ひとことでいうと、景観の保全のために必要な基礎研究をおこなう研究室です。ですから、景観(Landscape)と、保全(conservation)とが緑地計画学の一番基本になる重要な単語といえます。

 ここでいう景観とは地理学の用語で、景色や風景の意味とは少し異なります。景観は、一つの特徴によってまとめられる地域のことです。たとえば、ケッペンの気候区分を小学校の社会科の授業で習った方は多いのではないかと思います。ケッペンは気温と降水量が植生と関わっていることに注目して、気温と降水量によって、熱帯多雨気候や砂漠気候などの気候分類を定義し、それによって、地球上を気候的な特徴で区分しました。この区分された熱帯多雨地域、砂漠地域などは、世界的な規模で区分された「景観」と言えます。

 山梨県内などの、より細かい場所を区分する事もあります、気候と植生に注目すれば、暖温帯、冷温帯、亜高山帯、高山帯などに分けられ、地形や土壌に注目するときには表層地質によって地域区分することが一般的です。自然的な分類だけでなく、人文的な特徴を用いて景観を区分することもあります。ひとつひとつの景観は、特徴的な産業や生活様式をもち、地域の特徴や構造を把握していく基本的な単位として利用されます。そして景観には、その独特の風景が見られるため、景観の違いは、まず風景の違いとしてとらえられるのです。

 つぎに保全という言葉を説明しましょう。私たちは、自分達が生活していくために、土地を利用します。新たな利用法で土地を利用しだすことを、開発(development)と呼びます。開発を行うと、開発前にその土地がもっていた機能が変化します。たとえば、ブナ林だったところを伐採して、杉などの針葉樹林にすると、水を保持する能力が減少するのはその一つの例です。文明が進歩し、人間がどんどん開発を行うようになると、それまで明らかでなかった様々な悪影響が見られるようになってきました。そこで、開発を停止して、変化を抑制しようということになります。開発に対して、以前のままの状態を残すことを保存・保護(preservation)と呼びます。しかし開発は私たちが生きて、幸福を追及するために必要です。したがって、開発と保護・保存を調整し、適切に調整することが必要になります。この調整のことを保全とよびます。つまり、緑地計画は、景観の構造を読み、その機能を解明することによって、人間の生活空間の質を高めながら、持続性を持たせる計画なのです。

 緑地計画学研究室では、現在、都市河川の水質浄化能に関する研究をはじめ実用的な研究に取り組むほかに、山梨という地域の特色の情報をどのように集積し、それを活用して、どのように地域の機能を解明し、どのように保全していくか、基礎的な研究に取り組んでいます。

(いけぐち ひとし・ふじさく まさあき)

空中写真
気球から撮影した空中写真(甲府市内を流れる十郎川)
地域を真上から見ることのできる空中写真は、地域の状態を知る上で大きな手がかりになります。バルーン、ヘリコプター、飛行機、人工衛星など、対象となる地域の広さに合わせて、さまざまなプラットフォームを用います。

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