巻頭言

環境問題の解決に向けて


山梨県環境局長 三井新一


著者近影

 当環境科学研究所が開設されてから、まもなく2年が経とうとしております。

 その間、発足当時に掲げた目標に向けてほぼ計画どおりに業務を進めてまいりました。地域環境研究の実施、研究成果や環境問題に係る様々な情報の提供、青少年を中心とした環境教育の実施、さらには世界中の専門家との交流なども積極的に行い、各方面から好意的な評価をいただきました。今日に至る関係各位の格別な御支援、御協力に対し、改めて感謝を申し上げます。

 さて、今日の環境問題は、直接私たちの生活に関係のある飲料水や家庭ごみなどの身近な問題から、地球の温暖化現象のような全世界的に影響のあるものまで実に広範に渡っております。

 しかしながら、「身近なもの=身のまわりの環境問題」と「地球規模のもの=温暖化などの環境問題」は、別々の次元の問題ではなく、一連のものです。すなわち、私たちが身近なところできちんと処理をしないでゴミをつくり、水を汚し、大気を汚し続ければ、国土はゴミで溢れ、地球温暖化へとつながっていくという、地球にとっては極めて悲観的な将来への予測が成り立つことになります。

 このような、私たちの生活やさらには人類の存続にとって危険な状況を目の前にして、我々は今何をしなければならないのでしょうか。

 まず、私たち1人1人が「身近な環境問題」に関心を抱き、改善への取り組みを私たちの使命と考え、行動を起こすことが必要であるということは言うまでもありません。例えば、家庭でのゴミの分別排出は、リサイクル、減量化につながり、自然界から取り出して生産された物を地球に負担のかからない状態にして自然界に戻す、いわゆる循環型社会の創造に寄与することになります。これは私たちがほんの少し気を配り実行すれば実現可能なことです。

 一方、環境問題を解決するためには、実態の把握、人間を含む生態系への影響の解明、自然と人とが共生しうる環境づくりはいかにあるべきか等について科学的に追及していく必要があります。この環境科学と言われている学問分野は、問題領域の性質上、分化した諸科学の単なる寄せ集めでなく、学際的に取り組むことが求められています。このような意味からも、環境問題に取り組む県民を支援するとともに、環境問題に関して、地域の特性を踏まえ、幅広い視点から科学的に解明し、地域環境を全体的に把握することを目的とした当研究所に対して県民の期待は誠に大きいと思います。

 今後、研究活動をはじめ、教育、情報及び交流の諸事業をより一層積極的に実施し、積み上げられた実績が県の環境行政に反映され、県民の期待に応えるよう施策を具体化していくことが、「環境首都・山梨」の実現をめざす本県にとって、大切な使命と考えております。

 皆様のさらなる御支援を頂戴できれば幸いに存じます。

(みつい しんいち)

図
富士山での植物調査

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