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『星野道夫の仕事 第4巻 −ワタリガラスの神話−』
星野道夫 著
朝日新聞社

 ページをめくると、そこにある圧倒的な大自然に、誰もが目を見張ることでしょう。南東アラスカの鬱蒼とした原生林、美しく広大な氷河、そこに棲む動物たち。そして、厳しい自然の中でたくましく生きる人々の姿。今は亡き星野氏の目を通して、それらの風景がこの一冊の中に生き生きと写し出されています。

 彼の本を読むと、「生きるとは何か」を考えさせられるような気がします。朽ちた木は新しい木の養分となり、ニシンの群はクジラに飲み込まれ、降り積もった雪は年月を経て氷河となり、末端から崩れ落ちながら再び海に帰ってゆく。一つ一つの生命の営みがそれぞれ小さな環であり、それらすべてが大きな一つの環に繋がっている。そういう自然の摂理を、彼が写真と言葉でわたしたちに語りかけているからでしょうか。

 人間もかつてはその環の中の一部であり、自然と共に生きてきました。「越えてはならない人間と自然との境界」を守ってきたのでしょう。しかし、今や人間の営みは自然を押しつぶそうとしています。便利さや豊かさを追求する人間のエゴが、文明という名のもとに自然を侵食してきたのです。

 アラスカは、本当の自然が残された数少ない土地の一つでしょう。そこには、自然と人間との係わりの原点があります。物質文明に生きるわたしたちは、もう二度とその原点に引き返すことはできないのかもしれませんが、自らの生活を見つめ直し、少しでも良い方向へと改めていくことはできます。星野氏が遺した写真とそのあたたかな言葉は、人々にそんなきっかけを与える力を持っているのではないでしょうか。

 ワタリガラスの伝説を探してシベリアに渡った星野氏は、平成8年8月8日、カムチャツカ半島クリル湖畔でヒグマに襲われてこの世を去りました。彼の愛した極北の厳しい大自然の中では、生と死が隣り合わせに存在することを思い知らされる、あまりにも悲しい出来事でした。

 「星野道夫の仕事」シリーズ(全4巻)は、彼の亡くなったシベリアの地で終わっています。この先がつづられることはもうありませんが、遺されたすべての本の中に、彼の「思い」はいつまでも生き続けています。

(長沼浩枝)

                           
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