衛星データから正確な植生分布を知るために
 
環境計画学研究室
杉田幹夫


 衛星リモートセンシングは、地球上の情報を調べるために効果的な技術です。現在、地球観測衛星データは、主に、全地球的な環境問題を主眼として、全地球的な観測に活用されています。ところが、衛星データの空間解像度は、山梨県など地域的な環境調査に利用するのに十分なほど細かいとは言えません。
 LANDSAT(ランドサット)衛星のデータ(図1)を使って、地表を植生・土壌・水の3つに分類することを例にとりましょう。この衛星に積まれたセンサは地上で30mの大きさの物を判別する能力を持ち、観測できる最小単位(画素)は30m四方の空間と考えられます。
 図1の各画素に植生・土壌・水のいずれかを割り当て、それぞれに緑・赤・青を割り当てて表示すると、図2のような結果が得られます。この方法では、植生、土壌など、地表の様子で決まる太陽光反射特性と、衛星観測データを照らし合わせ、ある画素が何で覆われているか決定します。その結果として、植生量を推定することが可能です。
 しかし、実際には30m四方の空間を植生が占有することは珍しく。一つの画素の中では、通常、植生・土壌・水の複数が混在しています。例えば、ある画素に植生:土壌:水=4:3:3の割合で混在する場合、上の方法では、植生が画素を占有していると過大評価してしまいます。このような理由で、植生量の正確な把握が難しいのです。また、地上の経年変化を調べることを考えれば、30m四方の単位で起こる変化は少なく、画素の中での割合変化を調べることが重要になります。
 私たちの研究室では、植生・土壌・水の画素内面積割合を推定することで、地上の植生分布状況などをより正確に調べる研究を進めています。これは、画素の半分が植生、半分が土壌で覆われているときの衛星データは、画素を植生が占有している場合と土壌が占有している場合の中間のデータとして観測されるという考え方を、基礎にしています。この考え方を一般化することで、衛星データから面積割合を計算できます。図1から計算した植生・土壌・水の面積割合に応じて、緑・赤・青をそれぞれ割り当てたカラー合成画像で示すと、図3のようになります。この図には、植生が占有していると判定されていた画素の中での、植生の占有割合が反映され、図2で単色の緑だった部分が、緑に赤や青が混合した色で表示されています。
図1 富士北麓地域のLANDSAT衛星のデータ、
   1995年5月18日観測
図2 図1の分類結果.緑:植生,赤:土壌,青:水
図3 図1の画素内面積割合計算結果.緑:赤:青=
  植生:土壌:水のカラー合成.



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