フォーラム「富士山:世界遺産と環境保全」

第2回フォーラム

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第2回フォーラム「富士山:世界遺産と環境保全」  2006年9月28日開催

  

 

○出席者(自己紹介は文末に掲げてあります)

 早川 宏(富士山の文化的景観を守る会)

 山本 清龍(東京大学富士演習林)

 荒井 光雄(富士に学ぶ会理事長)

 小野 俊彦 (NPO法人アースバウンダー理事長)

 舟津 宏昭(富士山クラブ 山梨事務所所長)

 川島 攻 (富士山クラブ事務局長)

 篠原 滋美河口湖フィールドセンター館長)

 渡辺 通人(河口湖フィールドセンター自然共生研究室長・副館長)

 本郷 哲郎(山梨県環境科学研究所)

 荒牧 重雄(山梨県環境科学研究所)

 

○最初に司会者の荒牧が発言.このフォーラムの目的や運営方法について説明した.

その後約2時間にわたって,インフォーマルな討論を行った.以下の概要は,録音記録に基づいたものである.本文末尾に示したように,この会の目的は,自由でインフォーマルな討論であり,この記録の内容に関して,あとから発言の責任を追及されるようなことは無いという了解の元に,自由に発言されたものの記録である.

(前略)

荒牧: それからもう一つ申し上げたいのは,今度の問題は,「自然遺産についてじゃないな、文化遺産だな。自分は自然保護に興味があるから文化には関係ないな...」という受け取り方は非常に間違っているということです.文化とは言っても自然が絶対重要だということは,県の役人さん方も言っていますので、それがちょっと蚊帳の外に今までいられるような、一般の方は少し情報不足じゃないかなと。私は自分自身、そう思いましたので。だから私がご提案して,ここで議論していただきたいと皆さんにお願いしているのは、三つのキーワードを掛け合わせたもの、すなわち世界遺産で富士山で、それで自然保護あるいは環境保全と。それに絞っていただきたい.既にお声をかけたら、「いや、自分は世界遺産に興味ないから断る」とおっしゃっていただいた方も何人かいらっしゃる。そういう方もこういう話がだんだん重要だとお思いになれば,またもちろん発言していただいて結構です。とりあえず、そういう話でお願いしたいと思います。

というわけでもう1回繰り返しますが、一生懸命世界遺産を推進している行政当事者の方々も異口同音に、とにかく富士山の自然環境が良くなくちゃだめだし、ユネスコに出す作文には相当の分量で自然保護、環境保全についてはこういうプログラムをちゃんと作っていて、ここまで実現して、これからこういうふうにやるということを書く必要があるということだそうですので、非常に重要であるということですね。

そこで私が考えたのですが、皆さま、日ごろから精力的に環境保全、自然保護という問題に活躍されている方だと私は理解しています。これは一つのチャンスだろうから,こういう場所を設けさせていただいて、意見の交換、できればチャンスを活かすために何かアクションをお取りになる気はありませんかと、こういう問いかけをしたい.私自身は東京の人間で、極端に言うとよそ者なんですね。ただここへ3年近く奉職していますので、半分気持ちがこちらに入っていますけど.その私から地元の方々がどうお考えになっているか。ないしはアクションをお取りになられるようなことはお考えになりませんか・・・とお尋ねしたい。私はそういうことはいいことだなと思っているもので、そういう意味でこの席を設けさせていただきました。

これからの見通しを申し上げますと、このような会合を随時繰り返してゆくと同時に静岡県にも声をかけようと。できれば両県一緒にやれないだろうかと。協議会的なものでも皆さん、おつくりになる気はありませんかとお聞きしたい。そうやってだんだん話が盛り上がっていけば、当然いろんな社会のセクターの方、簡単に言うと利害関係が対立するかもしれない――自然保護と環境保全に関係している話題についてのみですけど、、そういう人たちと一緒に同じ席で議論をすると。当然官僚を入れて、それから当然国民会議の重要メンバー。だんだんそういう話に、それからいわゆる学識経験者とか,外にいる人がいろいろコメントするじゃないですか。これは国民運動だから地元の人間だけじゃないよというロジックだってあるわけで、そういう広い方々にも声をかける。

舟津:私、何も知らないのでお伺いしたいのですが。ご存じの方、いらっしゃったら。これは何か急ぐ理由があるんですか?

この世界遺産に、例えば今ここのステップというところで、例えば6番だったら6番のところまでをこの1〜2年の間に済ませなければならないという何か理由はあるんですか。どうでしょう。

早川:富士山の世界遺産登録を推進している団体は、発足当初に3年で富士山を世界遺産登録するとしていました。何を誰がどのように保全するかということより先に登録する時期を決めて、そのために何をするかという保全体制を整備することよりも世界遺産ありきという感じは否めないと思います。このままでは冨士山が暫定リスト入りすることはほぼ確実といわれています。

舟津:暫定リストとか、例えば何年に1回。

川島:毎年です。

舟津:ですよね、毎年ですよね。

川島:私の聞いているところでは、中曽根さんが引き受けた時に、やっぱり私が早く――。

荒牧:元気なうちにやってくれと(?)。

川島:そんな話を。それは私も聞いています。

舟津:急ぐ理由がない代わりに、別に遅らせる理由もないと。

荒牧:私の印象を申しますと、これは役人側の作業がもう始まっちゃったわけ、県が。そうしたらどんどん進むのではないのですか.

小野:私の聞いた話では、なぜ中曽根さんがそういうことを言い出したかというと、一つはメンツの問題。要するに富士山たるものが世界遺産になれない。自然遺産として問題があるのであれば,せめて文化遺産という一つ範疇の中で,登録されなければ沽券に関わるというような発想が上の人たちにはあるんだというふうな話は聞きました。

荒牧:どうお考えですか。実は私は気が短いので言いますけど、私は火山屋で富士山というのは火山。それで他にも火山で世界遺産になっているものはあるのですよ.しかし,富士山の自然のすばらしさは問題外で,山岳信仰とか芸術とかという問題だって富士山のほうが断然量が多くて、厚くて奥深いんじゃないかという気がするんですよね。そういう意味じゃ、ちょっとメンツというか、「何で富士山を入れない?」と言いたくなる気は私もあるんです。

早川:そのすばらしさを、いかに明文化するかということが課題だと思います。

小野:世界遺産、特に文化遺産というカテゴリーでという話があった時に、「何だ、自然遺産にならないから今度は文化遺産かよ」という感覚はやっぱり持ちましたね。どうして文化遺産かというふうなことを考えてみると、例えば本来の山岳信仰としての富士山に仏教的な遺跡が残っているかというと、殆んど残っていないわけですね。ただ伊勢神宮なんかを例に取ると、日本の信仰というのは伊勢神宮は照葉樹林という壮大な東アジア文化の一番果ては伊勢神宮。ですから伊勢神宮の周りには照葉樹林が残っていて、あの森の中に伊勢神宮が、60年に1回の遷宮など特有の文化が延々と続いてきたという自然環境という舞台装置があればこそ延々とその営みがあると。

富士山はじゃあどうかというと、先生がおっしゃったように火山という、やっぱり浅間信仰からきているというのもあると思うんですね。ですから当然文化遺産というふうなことの中で、特に富士山という文化的な遺産の価値というのを考えると、信仰という形での富士山のすごさというのをやっぱり支えているのは自然環境ですから、そういう意味で文化遺産とであっても文化の部分だけではないんだと。もっと広くいわゆる自然というものに目を向けたり、さらにもっと、自然遺産にはなれなかったんですが――。

荒牧:なれなかったんじゃなくて、しなかったんですよ。日本で決めただけでしょう。

小野:まあそうですね。ただ、外国から来られた方たちは――。

個人的な発言としても、やっぱりだめだということははっきりおっしゃっていましてね。ですからそういう意味では、やはりもっと富士山の文化的な部分を支えているものというのは自然だという認識は必要だろうというふうに思いますね。

荒牧:その線で私は最初に申し上げたつもりなんですが。私は別に世界遺産をやりたいと思って皆さんに話をしたんじゃないんです。逆に言いますと、現状としてはどうも世界遺産になろうという動きがものすごい勢いで動きだしちゃったと。しかも官を中心として、相当な予算がもう投入されているわけ。私のポイントは、世界遺産にするかしないかではなくて、なるのだったらいいチャンスじゃありませんか、皆さまの運動に関連して。要するに「なら、こうしないとまずいじゃない」と、そういうロジックができるんじゃないかなという、非常にある意味で低次元の話なんですけどね。

小野:うがった見方をすると、富士山は要するに国立公園としてゾーニングができたのもつい最近ですよね。いわゆる地域の行政のエゴがあったおかげで、保護地域の区分ができなかったと。

下手をすると、こういう文化遺産というふうな世界遺産に登録する上では、当然ゾーニングって出てくると思います。何か逆にゾーニングをしてしまうことで、開発の免罪符的な形にならないとも限らないということはやっぱり危惧されますよね。

荒牧:皆さん、大いにあり得るという顔をされていますが。で、あなたのご意見は、それで反対しろと言いますか。

小野:いいえ、いいチャンスだろうとは思います。ですから何かをしなきゃいけないでしょうし、このままでいることはないと思いますので。議論は必要だろうと。ですから先生がおっしゃったような一つの提案の中で、そういったものをお話をする場ができたり、地元の中にそういった協議会とか地元の人が参加しないで偉い先生方が決めて、いわゆる大きなものが議決されてしまうと、我々としては何も手もつけられませんし意見を出す場もないということになってしまいますので、そういう意味では非常に――。

荒牧:そうですか。ご賛同していただけるなら議論が進められますが。私は別に皆さん、世界遺産に賛成しろなんて言っている気は全くない.だけど、ご覧のようにNHKだ、民放だ,新聞,テレビだって世界遺産をずいぶん取り上げているじゃないですか。この頃はマスツーリズムのパンフレットだって、みんな世界遺産と書いてあるので、これは相当もてはやされるようになるのかという気がするんです。で、そういうことを見ていると,いい、悪いの問題を,例えば数年かかって議論しようという状況ではない気がするんですけどね。その辺、いかがですかね。

篠原:自然遺産がだめになったと言うけどね。

荒牧:だめにしたんですよ。

篠原:だめにしたと言うけど、それは復活することはできないんですか。ということは私は、他のところも見てリストに上がっているところもかなり出歩いているけれども、僕は複合的なものの考え方でいいんじゃないかなと思います。そしてこのチャンスにやはりやるべきだと。この時期にやっぱり世界遺産に価値のあるものですから。だけど文化遺産だけにかたよってしまうと、ややもすると日本人の考え、あるいはこの地域の人たちの考え方というものが自然を無視しかねないという危惧はあります。ですから僕は複合的遺産でなぜだめになったかという中には、やっぱり一つ考える論理、もうちょっと表へ出す顔がもっと学術的なものも含めて出さなかったところに問題があるんじゃないかと。世界的に見てもトンガリロに比べたらずっと違う成層火山、しかも山のでき方がかなり内部的に違う。そういうものをもう少し打ち出して学術的な価値も主張するような形で、僕はもう1回文化だけではなくして複合的遺産と考えるべきではないかと思っています。

荒牧:先生、非常に遠慮されて円くおっしゃっていますけど、私の感じではもう99%決まっているわけです。

篠原:そうです。

荒牧:だけど、これは俺は気に食わんとおっしゃるのだったら、もっと強くおっしゃったほうがいいと。

一同:(笑)。

荒牧:今のようじゃだめだ。「お前ら、何やっとる!」とおっしゃったほうが僕は効き目があると。私は全く反対じゃないんですよ。たださっき申しましたように、自然だ、文化だという対立というか、そういう問題はどうもユネスコ自身においても重きを失っているような印象なんですね。

小野:その世界遺産の、十何年になりますかね。なぜ富士山がだめかという一つの見方を聞いて、その時には私たちのイメージからすると山小屋のトイレの問題とか、ゴミの問題とかというのばかりクローズアップされましたけれど、ある程度時間が経ってあの人たちの言った言葉の意味というのを今あらためて気づくことは、1人の方が「このままで100年やってもだめだよ。100年活動してもだめだよ」という言い方をされたんですね。

荒牧:その「だめ」というのはどういう。

小野:「だめ」ということは、一体何なんだということまで掘り下げて考えなかったんですが。どうもそれから富士山に関る仕事をしてくると、今先生がおっしゃられた貴重な生態系とか特異な生態系、もしくは生物多様性ということを担保する、言わば自然林が圧倒的に少なくて殆んど人工林になってしまったと。もう一つ、ここで世界遺産という言葉で日本の国がというか、地元でやっぱり言い切れない、つまり主張しきれない理由の一つが、富士山の自然について本当に表に出すだけのものが調査なりされたものがちゃんとストックされているかと。

 これはある人と話したのですけど、今、渡辺先生がいらっしゃいますけど、せいぜい昆虫の分野で渡辺先生がされてきたぐらいのもので、あとはもう殆んど表に出して見るべきものはないと。実際に環境庁の段階で調査なんかで、いろんなメッシュの入った地図なんかを送ってきて、動物相に関する調査のアンケートなんかが来るんですけど、こんな大雑把な調査で本当に富士山の動物層に関するちゃんとしたデータになるのだろうかとびっくりするような程度なんですね。ですから自然遺産で押し切れない一つの裏面にあるのは、やはり本来の生態系に担保する自然林が圧倒的に少なくなってしまって人工林ばっかり。だから人工林ばかりだから、こんなものを自然林に戻すには100年やそこらじゃできないでしょうという意味が、おそらくあの時の言葉に含まれていたのではないかと最近気づくようになったというのが一点。

 それからよしんばそういったものが失われたものが何で、残されたものが何でというものを科学的な論拠がないと。この二点がやっぱり自然遺産になれない大きな部分なのではないかなと。

荒牧:あなたの口調から言うと、大体賛成なようですね。今の外人さんが言ったこと。

小野:というか、認めたくはないですけど。

篠原:世界遺産というものにはどのくらいあって、どのぐらいなのかと。じゃあ自然遺産と文化遺産とどのくらいあるのかということを調べてみると、総合遺産というのは中国に非常に多いんです。総合的な遺産というのは。

荒牧:何遺産?

渡辺:複合遺産。

篠原:でもそういうのがあって、例えば黄山にしても山岳信仰と美的感覚というようなものがあるんですよね。そういうものがある中で、私は富士山というもののこの文化、山岳信仰というようなものも非常に貴重なものであると思うと同時に、黄山にも負けないような富士山という自然があるんじゃないかと。そういうものが今、小野君が言ったように、もう手がつけられていって人工林になっちゃったとか、自然林が少ないとかということも大事だけれども、それ以上に僕は富士山という山の生まれ方というものは世界に誇るべきものじゃないかと思います。

トンガリロの人たちがフィールドセンターに来てくれました.僕が溶岩樹形の案内をしたんです。又、カナダの先生も案内しました。そうしたら、溶岩樹型の出来方について説明すると「これはすごいものって、こんなのはないよ」と言ってくれました。

だからそんな話をしながら、いや、これはこれだけあったら、この自然というものは天然記念物に指定されているということは、もう日本の国では認めているんだと。

荒牧:日本だけで認めてもしようがない。

篠原:だから、そういうものだから、こういうものをやっぱり今度出す時にもきちっと提示したほうがいいんじゃないかということを言っておりましたけどね。

荒牧:先生、お言葉を返すようですけど、やっぱり先生は自然で推そうとお考えですよね。

篠原:いや、そうでもないです。自然だけではなくてそういうものも含めて、そして私は文化的な価値、民族の文化、山岳信仰、崇拝、そういうものも日本では不離一体のものがあるから一緒に考えていってもいいんじゃないかなというのが――。

本郷:私の理解ですけれど、トンガリロの場合は有形の文化財のようなものがなく、それまでの自然遺産、文化遺産、あるいは複合遺産という枠組みに入れなくて、それで新しくできた考え方がこの文化的景観だと思っています。これはあくまでも文化遺産の範疇に入っていますけれども、トンガリロのように自然がまず貴重であるところ、その自然を基盤にうまれた文化も貴重だけれども、有形なものが残っていないところをどうやって指定しようかという背景があったのではないでしょうか。自然遺産という名前はついていませんけれど、文化遺産の範疇ですけれども、自然と文化を両立させた遺産として文化的景観というのは位置づけられていると思います。「文化的」遺産の中の「文化的」景観という言葉が独り歩きして、自然がどうでもいいんじゃないかと言われないように、文化的景観というのは本来自然があって初めて成り立つものだ、いいかえれば、自然が非常に重要だという前提で文化的景観になったということで、じゃあ我々は地元として地域の中で自然をどういうふうに管理するシステムを作っていくか。自然遺産になれなかった時にトイレとかゴミの問題が強調されましたけれども、自然をどういうふうに今後遺産として管理していくかという計画がなかったということも一つあると思っています。文化的景観になったからといって自然をおろそかにしちゃいけない。本来おろそかにすべきものではないという意味で、文化的景観だと言っているわけで、自然環境の管理をどうするかという議論を地域で進めていくことが大切でしょう。

荒牧:私は自然だろうが文化だろうが、環境保全に関しては興味ないんですよ.というのは私の提案というのは非常に低レベルで、世界遺産になりそうだと。皆すごい勢いで動きだしたと。皆さまの今までのご活動に関係あるんじゃないですか。そういうことを言っているので、今あなた方が、世界遺産とか自然遺産を作る人じゃないんですよ。ですから、その議論はここでやっていただいてもしようがないんじゃないかという気がするのね。いかがですか。

本郷:これは基本的な質問ですけれども、遺産になった時のその場所をどうしようとか、管理計画は誰が作るとか決まっているんですか?

荒牧:だからそういうところから始まるんじゃないかな。

舟津:そうなんですよ、本当に。だってここのステップ2のところのC番にも書いてありますけど、自然遺産だろうと文化遺産だろうと何だろうと、ここにも書いてある保護とか管理措置が講じられているのか。その講じられているのかというのは現時点で講じられているのかというのと、登録までにどういうふうに講じるのかということと、登録から先の計画はどうなのかとこの三つのところがちゃんと何も話されていないまま、話がどんどん進んでしまっているようで――。

荒牧:何も話されていないと言うと、学術委員会の先生は「話した」と言うかもしれない。

本郷:だからよく文化遺産で、管理計画はどこが立ててというのがしっかりしていなかったためにその町並みごと遺産に指定されてそこに住んでいる人たちが住みにくくなっちゃうとか住めなくなっちゃうということも出てくるわけですよね。

舟津:問題になっていますからね。

本郷:そういう意味でいけば世界遺産の場合、誰が管理計画を立てるかということが大切ですね。

小野:一つは管理計画とかシステムプランというふうなことを考えて、私もいろんな県の委員会とかいろんな役割に関わってきたわけですが、篠原先生が「お前ら、若いうちはもっと文句言わなきゃ」といつもハッパをかけられるのですが、非常に無力感を感じるのは、やっぱり富士山の地主というのは国と県なんですね。山梨県側はいわゆる山梨県、富士山側は国と。

荒牧:国と県が強いというわけ?

小野:つまり、地主が発言する中で強いですね。管理計画という一つの形というのは、あくまでイニシアチブを持つのはやっぱり地主なんですよ。我々に何ができるかとか、それから今回は荒牧先生がご発言いただいたこういうふうな形のものをどこに持って行くかというのは、やはり時を得たというのが言わば世界遺産になるというのが一つのタイミング。そこで何ができるかということ。我々にできることというのは、私はそういう意味でこの仕事を始めたのですけれども、やっぱり現在の観光に対するアンチテーゼということが一点。

 それから県などの会議に出てよく言うのですが、さっき先生がおっしゃった、「こんにちは・さよなら会議」ですよね。要は県が作ったものをその場で承認しておしまいみたいな、一つの話の時に――。そういう会議が多いんですよ。たまたま出されるのは。その時にものを言っても、それが一つの施策として反映されるかというと、そういう可能性というのは非常に低いわけで、それだったらむしろいわゆる管理計画とか保全計画というのはイコール利用計画。つまり、利用の方向性のない保全計画というのは全く無意味なんですよね、現実的な一つの施策の前では。そういう意味では地元の人たちがまだ気づかない、もしくは県や国がまだやらない一つのアクションとしてというのがもともとの発想です。

荒牧:そういうのをご発言するチャンスじゃありませんか。

小野:ええ、今回そうだと思います。それでさっき、実は文化遺産なのか自然遺産なのかの議論があった時、自然遺産になれなかった理由をちょっと話したのですが、私なりに解釈したのを。私はむしろ今回、富士山を世界遺産にという一つの話の中で、一番地元として、もしくは日本として世界の中に発信していかなきゃいけないのは、たしかに今の富士山とか非常に自然環境からするとていたらくですけれども、ただやはりまだまだ日本人の中には富士山を見て手を合わせる人がいるわけですよね。やっぱり傍から見て神々しい山だと思います。日本人の神観と言いますか、宗教観の中には自然という一つの舞台装置というのがちゃんとあって、その中でそれに対してスピリチャルな部分で感動を受けるというのがあるわけで、それを見ればいくらゴミが落ちていようが山小屋の便所が臭かろうが、いわゆる人工林にばかりなってしまっても、やはり富士山というのは日本人の中で一つの宗教観として生きている部分というのはあるわけで、むしろそういう自然観を持っている国民というのもここにいるんだよということこそ発信するべきなのが、今回の世界遺産に対する富士山の――。

荒牧:もう少し具体的に提案をお考えになれますか。

小野:例えば、富士講という一つのあれがありますね。富士講なんていうのは一つのおもしろい仕組みだと思うのですが。富士講そのものというのは後になってくると、最近欧米で流行りのファンドレイジング・ツアー的な皆でお金を出し合って、」誰か代表者を出そうじゃないかみたいな、いわば公としての価値も当然ありますけれども、同時に観光というのが非常によく機能していると。だけどその辺が非常にある意味ではゾーニングをされていて、要するに甲州街道から分かれて富士見市に入ってきて――。

小野:ええ、新富士講をというふうな一つのスタイルができないかと。それから青木ヶ原で思い出すのが前に3チーム連れてイギリス人ばかりのツアーで歩いたことがあるのですが、そこに参加してくる人たちというのは1週間かけて富士山に上るんですよ。

そこに参加している人たちはどういうところを歩いてくるかというと、アンデス山脈を自転車で越えましたとか、サハラ砂漠をラクダで越えましたとか、世界中のいいところを見ているんですね。その人たちが青木ヶ原を通って頂上まで行ったのですが、青木ヶ原をどうだったというふうに聞いたら,私はそれほど英語に堪能なわけじゃありませんが、非常に印象的だった言葉が「ピュア・アメイジング」と言ったんです。アメイジングというのは私が知る限りでは非常に宗教的な意味合いで使いますよね。神様のいわゆる恩恵とか恩寵とかというようなあれがある。やっぱり外国の人にもああやって歩いて行って、自分の足元に今日1日歩いてきた森があって、その上に森がないよという舞台装置というのは、やっぱり訴えるんだなということを非常に強く感じました。だからああいうふうなものを一つこれからやっていっていい。つまり自然という部分だけではなくて、日本人がこういう風景として何を感じていたか。

荒牧:これからやっていくという具体性をもう少し。この条件で。

小野:ですから今の富士講もそうですし、それからいわゆる日本人が富士山というものに対して抱いてきた宗教観みたいなものを、自然のエコツアーを通して訴える。

エコツアーそのものが自然を対象としたものではなくて、宗教だとか、これは前からあれしているんですけれども、山岳宗教を対象にしたらおもしろいと思うんですね。

山本:そうですね、今ツアーの話が出ましたけれども、今、富士山の北麓でエコツーリズム推進協議会というのがあります。それは環境省がやっているわけですけれども、今文化庁がやろうとしている世界文化遺産の登録というのと何か歩調を合わせられないかなと。これは、これまで頭の中で考えていたことなんですね。今、文化遺産で登録しようとしていて、それによって自然には大きな影響があるわけで、その時にやっぱり人が集まって主張すべきことというのはあると思うんですね。1人1人が環境教育とはこうあるべきとか、普及計画はこうあるべきとかということを個々に発言するんじゃなくて、やっぱりその保護管理計画を作る上で、私たちの意見を反映して欲しいというのは十分主張すべきだろうと思います。他にもいろいろありますけど、さっきの話ではそんなことが気になりました。

荒牧:いかがですか、他に。

渡辺:私は勉強不足で、その文化遺産に登録されている動きというのはあんまりよく分かっていないんですけれども。ここに10項目の記述があるんですけれども、上の人たちが、言い出した方々がどの辺を特に――。

荒牧:それはどこかにありますよ。何ページだったかな。

舟津:ありました。富士山のコンセプト資料があります。

渡辺:ああ、キーワードのところですね。

荒牧:それの前のページですか。「該当する評価基準」。

渡辺:神聖性とか壮美性とか。

荒牧:3番と4番と6番が重要らしいですね。

渡辺:自然遺産登録の時にはかなり地元も盛り上がっていましたが,今回、文化遺産は地元が簡単に言うと冷めているような気がしているんですね。

荒牧:それを私が気にしているんですよ。

渡辺:まず上からトップダウン的にやられているというところも非常に大きいし、それから地元に対してこういう意見を聞く機会も少ないですし。そこが一番大きなところじゃないかと思うんですね。

たしかに荒牧先生がご心配されているようなところを一番やっぱり懸念しているんですけれども。地元がないがしろにされて指定されたはいいけど、後々になって実は地元にもいろいろな問題で、権利的な問題がかかってくるとか、そういう後々の問題がないようにしていかなきゃいけないんじゃないか。そういう意味で先ほど先生がおっしゃられたような、地元の意見をもうちょっといろんな吸い上げるような機会をもっと作った上で、最終的な合意という方向にしていかないといけないんじゃないでしょうか。

荒牧:と思いますが、私は江戸っ子気質で気が短いので、吸い上げるなんていうものじゃなくて、押し込まないとというのが私のポイントなんですね。

渡辺:その一つの機会が今回だと思うんですけど。

荒牧:要するに受け身じゃ、これはあっという間に置いていかれると。

小野:学術委員の皆さんに日本橋から頂上まで一度歩いていただくとか、そのぐらいのことをしていただかないと。日本橋から。あれが全部舞台装置ですからね。

渡辺:せめて精進登山道を下から上へ。

小野:そうですね。そのぐらいはせめて。本当にそうですね。

渡辺:それが景観的にも自然的にも一番いいところですよね。富士山を代表する場所だと思うんです。この要素の中に自然の、景観はあるんですけどその中身が入っていないというのが一番の大きな問題ですね。

小野:そうですね。

荒牧:とにかく私、何も知らないでいきなり委員会。時間が刻々とたつ。なぜ急ぐとおっしゃったのはまさにそうです。急いでいるように見える。ですからアクションは早くとらないと。例えば、とりあえずちょっと待て。あんた方はまだしっかり我々に言っていないよというようなことでもブレーキをかけておかないと、「いや、言ったはずだ」と。

篠原:そういうふうに急いでいるというのは分かりますけどね。その中でもって私は市町村、地元が担わなきゃならない部分というのが非常にあるんです。それは日本人の権利というやつがかなり左右すると思います。ですから市町村に関わる負担というのは非常に難しいんですよ。例えばこの間の吉野、熊野。ああいうところを見ていっても、コアゾーンとバッファゾーンを決めるにあたっても、どんどん先行して決めちゃったために個人の権利が失われている。そういうところに問題が起きちゃって、こんなものを作ってもらっても、私の家じゃ杉を育ててそれで家を建てようと思っていた。ところがそれがゾーンの中に入っちゃった。だから木を切ることもできないし、うちでは家を建て替えすることもできませんよという意見を聞いた時に、やはり地元との合意、そういうものをはっきりとさせていかないと。特にこの富士山の山頂までは個人的な所有地、権利のあるところが非常に多いんです。そういう中に文化的なゾーンも入っているんですね。文化景観が入っているから、その辺をうまくクリアしていかないと。

荒牧:民有地というか、個人所有が多いんですか。

篠原:多いです。例えば登山道にしても、個人のところなんかそこまできているんですから。

荒牧:そういうのはどうやったらいいですか。アクションは。

篠原:アクションは、そういう人たちに理解してもらうような話をどんどん市町村がするなりね。

荒牧:市町村はやりたくないんじゃないですか。

篠原:そう。市町村は個人と個人の関係があるから、やりたくないんです。

荒牧:それをやらせるにはどうやったらいいですか。

篠原:それをやらせるには、やはり私は県なり国なりがこういう方向でいくけれども、協力をして欲しいと。そしてその世界遺産の価値観というものをそういう人たちにきちっと浸透させないと、僕は案外おもしろいものになっちゃって瓢箪を作ったような形になってしまうかもしれないですよ。おかしいところは閉まっちゃって、上はちゃんと出たり。

荒牧:時間的に大丈夫ですか。

荒井:ちょっと伺いたいのですけれども。世界遺産の価値観というのが私はよく理解できないんですね。ある程度精神的な部分が結構あると思うんですね。特に富士山というのは。一つ問題なのは、私は世界文化的景観の遺産に登録されたのは非常に好ましいと思うんですね。それはなぜかというと、やはり当然のことながら管理保全計画は後になるか前になるか分かりませんが、当然そのことは避けて通れない部分ですね。そういう意味では自然保護はされるというふうに考えているんですね。今までも自然遺産、それから今回の文化的景観とかそういうものも含めても、行政をはじめ民間でも,とにかく経済優先というところが非常に強いわけですね。ですからそういうところも改善されていくべきだろうというふうに思うのですけれども、先ほど地元でなかなか熱が入らない、議論が上がってこないということも世界遺産になったらどういうメリットがあるのか、どういうデメリットがあるのかということが皆さん、よく分かっていないんですね。

荒牧:そうすると先生、あなたのご提案は啓発活動ですか、まず。

荒井:はい。

荒牧:それはだけど、皆さんがおやりになるので、私はできないですよね。啓発だけど時間がかかりますよ。

荒井:ですから特に行政にはそういうことを求めたいということですよね。

荒牧:そこで私のポイントは皆さんに、行政に何か問いかけをしようというお考えがかなり合えば、これは例えば協議会的なものを作るというのが一つだし、別にそれは固執していませんよ、私は。何かそういう意味で、とにかく話し合いがなくちゃという気がしているんです。私は東京の人間ですからよく分からないんですけれども、地元の方々がはっきりと注文を付けるとか・・・.もうちょっといかがですかというのが私の気持ちなんですね。

 もちろん私も喜んで参加しますけど、私は足が地についていない。これも十分わかってください。ただ、ちょっともどかしいという気はある。で、何とかうまい考えはないでしょうかと.

山本:世界遺産に登録するにあたっても、どういう場所がどんなふうに使われていて、今後どういうふうな影響があるのかということについては調べる必要があるので、意思のある人たちが集まって、地域の事情みたいなことをしっかりストックしていくということはかなり重要だと思うんですよね。そういう意味では集まる場所というのは必ず必要で、前半でずっと話をしていた文化遺産としての問題性とか、自然遺産でないことの問題性とかということをずっと議論していくよりは、むしろさっきおっしゃったような普及啓発活動を具体的にどういうふうに進めていくか、このことが重要だと思います。これは放っておいたらコンサルの役割を果たしている大きな会社が莫大な情報をストックして、地域の事情と乖離した申請書を作ってしまうわけですよね。

荒牧:今、書きつつあるでしょう。

山本:そうでしょうね。だから、そのタイミングを逃さないためにも、荒牧先生みたいな人が今どういう状況にあるのかという情報提供が必要だろうと思います。

荒牧:私は今言ったように、あまりよくは知らないんです。あんまりやる気もない、悪いけど。やれない。分からないからね。言えることは、今チャンスだと。何かこう最小限のエネルギーで行政に注文つけると実現しそうなことって何だと言うと、景観保全。景観破壊を防ぐ。

139号線は電柱が全部茶色になっていたんだけど、最近来たら反対側に白い電柱が全部ついているし、ああいうのは一体茶色に塗るほうがいいのか、悪いのかというコンセンサスが必要だけども、どっちかにしろと言いたくなるし、それからどなたか前の会の時におっしゃっていたんだけど、どこかで電柱を減らしたんですって。そんなことも結構ですよね。景観というのはやっぱり一つのキャッチフレーズじゃないかという気がするんです。要するに世界遺産だからお客さんが来て「汚い」と言えば,例えばの話、五合目の終点のところの看板が汚いとかと言えば、みんな「そうだ」と言うに決まっているから、それならもうちょっときれいにしようとかね。それはある程度強制力がつくから、例えばまたアメリカになっちゃうけど、国立公園では白地に黒という看板は原則的にはだめなんですよね。日本だってそうなんでしょう、きっと。要するに視認性は悪いけど一定の条件で周囲と調和するとか...、周りとの色とかといろんな話があるじゃないですか、

小野: 20年前に山梨県は富士山の景観保護条例というのを作っていますよね。その時の検討委員会に出席したのですが、びっくりしたのは東京の有名な建築家の方がみえて「富士山は日本国民共有の財産です」と言ったら、ある富士山の業者関係の人が「いや、あれは俺のもんだ」と言った有名な話があるのですが。何を言いたいかというと、つまりどうも先生の話を伺っていると、今回「富士山を文化的な景観で」というその言葉が胡散臭く聞こえてきたのですが。さっき渡辺先生がおっしゃった、何も書いてないじゃん、具体的なこと。どうも日本人が見てきた富士山、文化的な価値って何って。横山大観の富士山の絵がすばらしいとか、富嶽百景がすごいとか、あれはみんな麓から描いているんですね。誰も上からものを見て描いているわけではないので。つまり富士山の文化的な価値というのはあくまでも借景なのであって、いわば富士山本体そのものじゃないんだというところに何かちょっと嘘臭さを感じたんですけど。

荒牧:いや、嘘じゃなくて、都会の人間が日本国民の財産だと言ったこととつながっていくんですよ。それでおっしゃるとおりで三十六景見ると、ほとんど皆遠景なんですよ。ご存じでしょう。もちろん中景もありますけどね。近景なんて殆んどゼロですよ。だからそういうところは非常に重要だと思うので、私も全く賛成なんです。だからどうしろというんですか、そうすると。

小野:だから、どうするかという話なんですね。その辺が。さっき心配されたように、いわゆる頭ごなしにそういうものが整備されてしまって、地元の人が大丈夫かというのを話したのと同時に、逆にせっかくここまでできるんだから既得権の上にあぐらをかいてやってきたら、ちょっとこちら側からしたらあまりありがたくないものを排除するチャンスかなと思ったり。いかんせん、あれですよね。降って湧いたような話で。ただ行動すると言っても、もう間に合わないよと言われてしまうと困ったなと。

荒牧:私のポイントは、何で地元の方はもっとエゴを出して戦わないんですかと言いたい。要するに簡単に言うと、国民会議が、富士山は国民全体の話だからお前ら我慢しろと言われかねない。そういう意味でしょう。

小野:今現在、そういうふうに聞こえますよね。

山本:今、景観の話が出ましたけれど、もともと国立公園に指定された時も――。

富士山がどう見えるかということで範囲指定したんですね。富士山の利用というと見るというのが基本になっています。見る対象であってそれが中心なんだろうと思います。

荒牧:それは大きいようですね。でも地元の人はそんなに見てないでしょう。

山本:そうかもしれないですね。それだけじゃなくて、話はね。もちろん上る人がいて、さっきの宗教登山の話に関わりますが、例えば昔の人は上る時にわらじをはき替えて、今考えてみると外の植物の種を中に運び込むのを防いだ可能性もあるし、そういう見るだけの富士山じゃなくて実際上ったりという、もっと密に富士山と関わるような人たちに対して非常に影響があるわけですよね。そういう文化という意味で総合的に文化というのを本当に考えているのであれば、東京の街並みだってもともとは富士山を見るためにできている部分もあるわけで、通りもそういう方向についているわけですね。そういう意味ではその富士山の文化として登山というのをしっかり捉える必要があるだろうし、その利害関係者なわけですよね、富士山を登り、見る私たちは。

さっきの見るだけじゃなくて登山するとか、他のいろんな富士山との関わりというのをどうやって保護していくかということを考えるべきだろうと思うわけです。

荒牧:だけど保護していくということを考えるべきだと、私の理解では皆さんはもう既にそういうことを決められて活動をされている方だと思っている。そういう議論をここで別にする必要はないんじゃないですか。

山本:そうですね。もちろんその議論の行き着かなきゃいけないところは、その次の先の部分ですよね。

荒牧:そうですね。私がこうやって席を設けたのは、何か皆さん、ちょっとやりませんかと。やる気はありませんかと。その申し上げる理由は、チャンスだと僕は思うんですよ。今ね。ただそれだけなんです。

渡辺:やっぱりそこの主要な要素がすごく気になっているんですけれども。これだけ見ると特に細かいゾーニングをしなくても、とにかく富士山という何かイメージ的なものだけでいこうという、そういうイメージがあるんですが。そんな感じが強いんですよ。それでなってしまった時に、はたして本当に自然保護的な管理がされるかすごく不安ですね。

荒牧:おっしゃるとおり、私も全くそう思っています。

渡辺:1ページ目の評価基準の9とか10のところに「進化発展において重要な進行中の生態学的過程」とありますが、そういう意味でも富士山というのは非常に大事な面もあると思うんですね。

荒牧:しかし、小野さんがおっしゃったこととちょっと違いますね。小野さんはある意味で絶望されているようにも聞こえたので。

小野:いや、そうではなくて、一つの評価基準として見た場合に、本来の富士山の姿から見れば相当やっぱり乱開発されてしまったという現実はあるということで、今現在富士山には何もないとは申し上げていません。

渡辺:それプラス、10の「生物多様性の政策区域内の保全」というのも入れようと思えば入ると思うんですよね。ですからそういうものも含めて、どうせ指定されるんだったらそういうものも全部入れて、さらにその保護管理計画とか実際の保全につながるようなものにしていく方が、実りがあるかなという感じがしますね。

荒牧:それを入れろという要求ですね。私のつまらない心配ですけど、自然を入れろ、自然をもっと強調しろということを正面からいくと、難しいんじゃないかと。ただ今おっしゃったように、環境保全は重要だろうと。これは誰ももう文句は言えない。

渡辺:そういう動きができれば。

荒牧:それだけど、先生がやっていただかないと誰もやりませんよ。

小野:たしかに人工林ばかりになってしまっているということはあるんですが、例えば青木ヶ原。それからもう一つ、私はこういう特に「文化的な」というふうな一つの側面の中でものを考えた時に、これから残すべき自然というのは北富士演習場だと思うんですよ。かつては草山三里、木山三里、焼山三里という信仰的な一つのステージとしても見事だし、同時にやっぱり人間が火入れをしてきたという中で、残された自然というのは非常に植物的にも、野鳥的にも、哺乳類的にも貴重ですよね。あれが例えば今、ああいう戦車だとか鉄砲なんか必要なくて、ミサイルと人工衛星だけの戦争になったら演習場なんか要らないとなった時に、さあ、あれが還ってきましたと。何か上からやっぱりかぶせるものがないと、あんな広い広大なところはあっという間に中央から資本がきて何かされちゃうんじゃないかというようなことってたしかにあるんです。ですから、こういう景観とか文化とかという中で、やっぱり今一番現実的にここはこうかけておきたい部分というのは実はあることはあるんですね、そういう北富士演習場とか。

荒牧:あれを保全しろと?

小野:つまり北富士演習場というのは、今は「演習場」という名目で地元の人たちがそこから補償金をもらうために、それを要するに恣意行動として、デモンストレーションとして火入れをしたと。その結果として半人工草原が残されているという非常に皮肉な状況になっているのですが。そうではなくて、地元の人たちがやっぱり火入れをするからあの草原という環境が守られていて、本来の信仰空間としての草山三里があってその上に森林の木山三里がある。その上には森林限界以上のナカノ三里という信仰空間があるんだよというふうなことを言う上でも、何か一説ではディズニーランド的な施設を作るなんていう話もあるみたいですけど、そういうふうにはしたくない。

早川:現在、山梨県でも殆んど原案というのがありますね。ご存じのように世界遺産の場合はコアゾーンとバッファゾーンとあって、コアゾーンは五合目から上とあとは両方の登山道ですよね。そしてあと――それが基本的なあれですか?

赤い部分は特別メイトですよね、多分。

荒牧:そうです。この緑色の輪郭が今の演習地ですね。

早川:ちょうど今おっしゃったところに特別危惧種とか、それからすごいきれいなススキの草原とかがありますよね。あれは一つの文化ですよね。

荒牧:何か具体案を。あれはちゃんと火をいつも入れて、鉄砲はなるべく少なく撃てとか?。

早川:というか、バッファゾーンから外れているんですよね、県の。だから今、小野さんのおっしゃったのと関連してここを入れちゃったほうが。裾野も富士山だという話もありましたよね。

小野:文化遺産ではないということではありますけれども、要するに景観という側面から見ても文化、特に宗教的な、信仰云々になった時の実は空間的な意味でも、それから同時にここに訴えているところの生態的な意味でも、いわゆる多様性という――。

荒牧:それは作文できるかな。

小野:このままできるんじゃないですかね。ですからやはりこういうふうな形の中で世界遺産というあれにするのであれば、こういうふうにも配慮して、今現在残されているこういう空間に関してもより適正な――。

荒牧:私が興味を持ったのは、これは多分、外すつもりだと思います。それを虚をついて逆にこれを入れろと言うのもおもしろいと。

早川:演習場には最大の縦型の樹型もありますよね。

小野:そうですね。

早川:いろいろな洞窟があり、おもしろいですよね。

小野:ええ、おもしろいと思いますね。

早川:植生的にもおもしろいし、非常にある意味で――。

荒牧:でも100%否定するんじゃなくて、そういうふうなやり方で演習地をプラスの――。

早川:世界遺産に対象とすると審査に不利になるという現実的なことがあるならば、コアゾーンやバッファゾーンの概念に捉われない保全方法もあると思います。

荒牧:もし作文ができれば、みんなずいぶんおもしろいと思うかもしれない。

早川:富士山の世界文化遺産を検討するにあたり、平行して、北富士演習場が将来一部、もしくは全面返還された際にも乱開発がされずに、富士山の景観と環境を守れるような制度が交換条件的にできないでしょうか。いったん決められてしまうと、なかなか後では変えらないと思います。

荒牧:相当根本的な問題ですから大変だけどね。

早川:50年以上前に指定された特別名勝の区域は、文化財保護法の保全対象になっています。既成の制度により保全がやり易いからコアゾーンにしていることもあると思います。本来は世界遺産としての文化的景観を保全という目的から区域を指定することが求められると思います。信仰と芸術の山としての富士山は、歴史文化の保全だけではなく、自然環境の保全も同時に考えることが求められます。すばらしい自然環境とそれに伴う景観があってこその信仰と芸術の山であるわけですから。それに富士山の世界自然遺産登録は、すぐには難しいと思うんですよね。ですから今のこの世界文化遺産で富士山の保全体制が決まっちゃう可能性があります。

荒牧:だから文化だ、自然だというのは、僕はちょっと問題――。

早川:自然とか文化にとらわれないことが大切だと。

荒牧:そうそう。今の筋からちょっと外れている気がするんですよ。分からないけど。

早川:となると、世界自然遺産としてあるべき富士山も視野に入れて世界文化遺産を考えることも求められます。

渡辺:先程のように北富士演習場ってすごく大事なところなんですよね。今実際に私がメインで調べているのはそこなんですけれども。昆虫にしても植物にしても鳥にしても、富士山北麓の絶滅危惧種ってここにみんな集中しているんですよね。ところが国立公園地域外から最初から外れているわけですよ。その管理上の問題だと思うんですけれども、その経過がよく分からないんですけれども。

荒牧:他はないんですか。

渡辺:今までは人の手が入っていないところをそのまま保存すればいいというのが自然保護法のねらいだったと思うのですけれども、現実に今、里山的な手を入れないとそういう絶滅危惧種がいなくなってしまうというのが現状なものですから、そういう意味では北富士演習場のおかげで絶滅危惧種が守られているという現状もあるんですよね。できるのであればそういうものも入れた方がよりベターだと思いますね。

早川:現実的には世界遺産のコアゾーンやバッファゾーンには指定できないこともありますので、第三のカテゴリーを設けて保全するとうことも考えられると思います。海外ではコアゾーンやバッファーゾーンの外にカルチャーゾーンを設けている例もあるようです。

早川:世界遺産というのは保全対象に合わせてどんどん変わってきていますから、本来ならばやはり富士山に合わせて世界遺産の作業指針を変えるほうが本当は良いと思いますが。

荒牧:しかし私のちょっと印象を申し上げますと、皆さん、志が高くて今までのおやりになっていることを何とかしたいという考えがあるので、結局正面からぶつかっちゃうのでやっぱりなかなか大変なのではないかという気がするのですけどね。

私はやっぱりお客さん、観光が非常に大きいと思うんですよね。その世界遺産というのは全部。そうでしょう。だって観光業界があれだけ飛びついているのはどう見たってそうだと。それにはやっぱり景色、景観というものから攻めるのも一つじゃないかという気がするんですね。景観が、特に遠景は変わらないですよね、昔と大して。きれいな富士山。中景になるとちょっと問題があって、近景が悪いというのが僕の理解なんですよ、今までを見ていると。近景からすぐに直していけばいいじゃないですかというようなことはできませんかねというのが。例えば五合目が汚いと。今言った看板を何とかしなさいとか、それから馬のおしっこが臭いから何とかならんかと。結局お金でしょう。それじゃ入山料を取るとみんなで透明なやり方でやろうというのも一つの手かもしれない.ただ、入山料、環境税と言えば日本では全ての場合話が成立しなかった。だけど一般論はみんないいと言っているんでしょう。不思議な話です。そういうのももう一押しできないかと。

小野:業者の仕組みというのは、保全計画があって管理計画があって、縦割りの行政区分があって、まさにそれを象徴する山は富士山なので、何でその気にならないんだとさっきから先生は言われていますよね。やっぱり――。難しさというんですか。富士山のやっぱり持っている――。

例えば北富士演習場の問題もそうです。いわゆる環境ということから考えればあんなにすごいことにならないんですけれども、あれに一旦手をつけようとすると日米安保の問題から始まって地域の既得権の問題、さまざまなのが関わってくるんですね。だから逆に言うと、世界遺産みたいなものしか恐らくその上に軟着陸できないんでしょうね。もっと違う、いわゆる国レベルとか県レベルなんていうものではなかなか収まらないと思うんですね。ですから例えば北富士演習場が持っているその自然的な価値、それからいわゆる景観的な価値、文化的な価値みたいなものを例えば一つの啓蒙するようなそういうツアーをやったり、そういう立場の違う人間がいかにあそこを守らなければならないか。あれが守られない中で本当の富士山の文化的景観というのを前提にした世界遺産というのはおこがましいよというふうな言い方というのは、きっとできると思うんですよ。ただそこから先にある――。

荒牧:今おっしゃったことは大体みんな受け入れるんじゃない、官僚でも。

小野:どうですかねえ。

荒牧:表向きは。作文では。でしょう。

小野:そうですね。ですからそういうところまで一つの形として、例えば富士山の自然遺産が盛り上がったと。たしかにあれは盛り上がったのですが、盛り上がった一番大きな理由というのは、マスコミがくっついたからなんですよ。答えは簡単なんです。

荒牧:マスコミもなぜ使わないんですか。

小野:いえ、いえ。もともとの一つの話の言いだしっぺというか、静岡新聞と山梨新聞が両方についたと。わーっと下から盛り上げたので246万集まったというのが一つの結果論だと思うんです。今回の場合というのは上で話があって、この問題を地元の中で活動して何とかしましょうよというふうなものの動きがない。動きのそのコアになる部分がないんですね。例えば当時はマスコミだったと。情報がコアになったというのは、まさに活動が大きくなった一つの理由だと思うんですが、今回はやっぱりその運動に対するコアがない。

ですから今の話は、今の段階で我々として何ができるかという一つの話になった時には、やはりこれも残すべきだと。これも大事だよと。これについてもちゃんと保全してくれと。そうでなかったら本当の意味で世界遺産じゃないじゃないかというふうな発言や提案はできると思うんですよ。何でいかに保全はすばらしいかとか、何でそれに意味があるのかというふうな、例えばツアーをやるとか、そういうシンポジウムをやるとかというふうなことでもおそらくできると思うんですね。そういうレベル。それを一つの声をまとめてその先に出すためには、やはり運動の中心になる何かがないと、おそらくその動きがより大きな声にはなっていかないんじゃないかなと。我々としてできる部分というのは、おそらくその辺なのかなと。

荒牧:小野さんはかなり絶望的な――。

小野:絶望的というか、やっぱり時間の問題と。

荒牧:今までのご経験がきっとあるんでしょうね。

小野:うん、ありますね。どうなんですかね。

篠原:このいろいろな問題をクリアして世界遺産になるために、一番このクリアできない部分というのは。私は何か話し合いの中でもって上の人たちがいて作っていくということは分かるけれども、そういう人たちにユネスコで言っている「顕著で普遍的な価値」というのは探してあるんですか、ちゃんとそういうものは。僕はそんなことはないから、ユネスコの会議のほうでもって認めるのに作文すりゃいいのか、その辺のところがね。

篠原:もっと政治的に解決するんじゃないかと思っていたんですよ。

荒牧:私、ユネスコに尊敬の念を持っているわけじゃない。だけれども、ユネスコの持っているそのお墨付きですか、ああいうものが経済的価値もきっとあるでしょうし、どなたかおっしゃったようにメンツみたいなものもあるでしょうし、国民全体が誇らしく思うならそれはそれでものすごく大きなアセットですよね。

篠原:先生はそういうふうに、まあそういうものができあがるんじゃないかという前提でもって話を。だけど私どもの立場からすれば裾野に住んでいる――頂上じゃないですよ、私ども裾野の石ころみたいなものだけども。

篠原:そういう人たちから見ると、もっと富士山には文化的な、普遍的な価値観のあるものがある。そういうものをもう少し探したいと、私は先生が言っているのかと最初は思っていたんです。

荒牧:すみません。そういう高尚な話じゃないんです.

篠原:じゃ、保護するんだったらどうしたらいいか。

荒牧:小野さんにもそういう意味じゃ軽蔑されるかもしれないけど、もっとチャンスだから食いついて、ちょっとでも何かもぎ取ったらいかがですかと僕は言いたい。私自身も偉そうなことを言っている気は全くなくて、私のキャリアの中でやっぱり正面から戦った経験なんかないんですよ。だから難しいということは一応分かっているつもりです。ですけど今、何かひょうたんからコマみたいに世界遺産がどんと上からきたわけだ、それこそ。その中で見ていると、今もう環境保全というのがどかんと出てきて、そこがある意味でアキレス腱みたいになっているという言い方もあり得るでしょう。ですから今チャンスじゃないかと。私はさっきから「都会の人間だ」なんて言っているけれど、3年間ここにお世話になっているから情が移るわけですよ。そういう意味で一番損するのは地元の人じゃないかというのが僕のポイント。そんなの言いたくなかったけど。

篠原:その環境保全をしていく場合に、例えば私どものような民間の人たちが集まって環境保全をするという大義名分で、何か国との交渉する手がかりというものを作るべきなのか、あるいは――。

荒牧:私はそう思います。というより、官僚に命令できるんですよ、今。サジェストできる。今環境保全をやらなきゃいけないということになっているんだからと私は思うんですがね。

篠原:ただ、今、行政のほうで進めているのに環境省か何かでやっているのですが、「観光ルネッサンス事業」というのがあるんですよ。そういうもので町は取り組んでいるんですよ。景観をどうしようとか。それで基本的には富士山というものは、二つの大きなポイントがある。登ってみる楽しさ、眺める楽しさ。要するに景観と登山、そういうふうな見方をしているんですよね。だから例えば具体的に言うと、今の河口湖の町の要らないような看板、要らないような標識、そういうものは除去していってもいいんじゃないか。

荒牧:なぜやめろとおっしゃらないですかというのが僕のここまで、口まで出ているんです。

篠原:それは言っているんです。私もそういう立場で。

荒牧:例えばそういうことを皆さんがもし合意されたらば、一緒のグループとして申し込むことができませんかということ。

篠原:私がまずこの町、私も先生と同じで住んでみて真っ先に言ったことがある。何でこんなに個人の看板が多いんだと。今、だんだん少なくなっちゃったんですね。

荒牧:東京だってそういうことですよね。

篠原:そうですよね。

荒牧:東京は目をつぶるわけでしょう、皆さん。だけどここはその世界遺産ということで。

篠原:そうです。景観ということで。

荒牧:東京の人間もそうなんです。東京の人間もここへ一泊二日で来て、ああ、いい気持ちになって帰った。さすが富士山ってきれいだなという中に看板の美しさが入っていてもいいと思うんです。それは、僕は世の中の普通だと思うので。だから志が非常に低いんですけど、看板から始まって。私に言わせれば私は一応学者のはしくれなので、説明の案内板みたいなものはもっとつけていろいろと啓発、それこそインタープリテーションというものをもっとハード的にはいくらでもやれるわけですよ。日本はその手の看板が少ないし、大体システマテックにいいものがない。そういうものが今、いいチャンスじゃないかと私は思うんですけどね。

篠原:それも先生が言ったものをもう既に町も県も考えてきているんですよ。

荒牧:あまりそう思えませんが.

篠原:それは今どれだけ具体化していくかということで、以前から見ると、ですよ。先生より私のほうがちょっと長く住んでいるから。それを見ると、以前から見ると看板はかなり整理されていて――。

荒牧:ずいぶん良くなっているんですね。

篠原:ええ。だけど私の言っているのは、今度はそういう看板の中で今から情報化時代ですから、いろいろな情報の中でもってホテルという看板はこういう色のものにしろとか、自然遺産はこういうものにしておくとかというふうにしておけば、今度はカーナビを使って来ても何を使って来ても、そういうふうな町づくりというものをしていくことによって富士山の景観は守られていくんじゃないかと私は思って、そういう中で一番私は夢に描いていることがあるんです。それは何かと言うと、自然保護だ、自然保護だと言いながら実際保護していない。そういう場面がいっぱいあるんです。それの最大のものはスバルラインを自動車で上っていくということ。

荒牧:あれをやめろと。

篠原:あれをやめろ。それをするのだったら、スバルラインに排気ガスのない電車だっていいんですよ。そういうものを通しながら上っていって――。

荒牧:先生、それは大いにいいんだけど、時間がかかりますよ。

篠原:だからもしそういう中で私どもがそういうふうな自然保護という立場から言うと、そういうことも将来的な計画の中へ入れてもいいんじゃないかと。そういうものを要求してもいいんじゃないかと。

篠原:この会の本音は短いということは分かりますよ。だけどもせっかくこういうふうな人たちが集まってやっていこうという中に、一番根拠の部分、目標というのはそういうものを含めてもいいんじゃないかと。

荒牧:それはもうおっしゃるとおりだと思いますが、小野さんのご発言が私には一番気になってね。あなたの絶望感というのはね。それは長い経験で、一番多分あなたは戦ってこられたのではないかと勝手に思うので、そこが少し心配というか。

小野:絶望しているわけではないんですが、なかなかこういう富士山を取り巻いているさまざまな、さっき言った行政といわゆる官僚の仕組みとかいろんなことをあれすると、正直言うとなかなか住民運動として盛り上げる盛り上げ方がすごく限られてしまうんですね。やり方が。

ですから、極端なことを言うとさっきはああいう言い方をしましたけれど、何かもし本当に我々が自分たちのほうでやってきたことを今回のこういう世界遺産というふうなムーブメントにして何か一矢報いると、何かやるためにはまず一つのシステムと言いますか、さっき言ったコアになるものは何かというものを探すことがすごく大事なんじゃないかと。

荒牧:コアってどういう意味ですか。

小野:つまりさっき言ったように、かつてはそれがマスコミという一つのあれだったのですが、富士山は実はマスコミがあれをして成功した事例っていくつかあるんですよ。富士山の五合目の立体駐車場、あれを反故にしたのも元々は読売新聞がぱっと持ち上げた。あれも地元の活動家がリークしたというところから始まっているんですね。

 ですからやはり2カ月半で246万の署名が集まる山ですから、圧倒的に注目度が高い。ニュースバリューがあるというやっぱりそういう面から考えると、何かどこかが支援してくれて、こんなシンポやりませんかとか、こんな意見があるんですよと。こんな今、世界遺産に決まっていいんですかね、みたいなことが誰とは言わないですけれど、誰かが相当たきつけて。

荒牧:何かCMを探すという動きはありませんかね。おっしゃることはよく分かるつもりなんですが、私はとてもそんなことは思いつかないし、誰かいるかもしれないし、おっしゃるとおりですね。

小野:なるんじゃないですか。そういうふうなものがあって、さあと言って、じゃあ誰のところに何を聞きなさい、誰々のところに行きなさいと。

荒牧:だから「よし。俺はマスコミでやるからお前らついてこい」と言う人がいれば、これは僕はおもしろいなと思って声援したい。

小野:マスコミはおだてるだけおだてて、下から平気でハシゴ外しますからね。恐いですよね。

荒牧:それは、あなたはだいぶ痛い目に遭っているから知っているわけでしょう。それで何とかやれませんかね。

小野:決して世界遺産に登録する動きに棹を差そうということではなくて、いわゆる本来地域の人間が一つの価値として考えているものに対してもうちょっと配慮が欲しいとか、こういう大きなものがぱっとかぶさった時の恐さといいますか、その辺の地元に対するちゃんとしたコンセンサスなりがあれば。

荒牧:遅いですよ。

小野:いえいえ。だから、そういうふうな一つの持ちかけでいわゆるあれすれば、マスコミもそれなりの食指を動かすんじゃないかと思うんですね。

荒牧:それから先ほどの話で僕がおもしろいと思ったのは、なぜ演習場を入れないんだと。

小野:そうですね。

荒牧:これで2〜3回特集が組めますよ。

小野:組めますよね。

荒牧:いろいろあると思いますよ。私、あまりそういうことは得意じゃないから。 もう1回言いたいのは、今山梨県しか知らないけど、山梨のトップで一応知事さんが推進しようと号令をかけているわけでしょう。それでプロジェクト・チームというのができて,その人たちは一生懸命やっているわけね。そこにいろんなことを言いに行けば、案外アクセプトするかもしれない。

山本:ただ外に対して難しいなと思うのは、例えば今、文化、文化と言っているけど環境のほうが大事だということを主張しつつも、私たちが有効な施策を盛り込んでもらったりということもしなきゃいけないことです。もし、これには表向き反対しつつ自分たちの意見を反映させていくための活動とするためにはですよ。そういう私たちが二律背反する――。

荒牧:あなたは基本的に反対なんですか?

山本:いや、僕はどちらかというと賛成ですよ。

だから、そういう活動をする上でもその目標像というのは仮に一つであったとしても、表向きというか世の中に対して二つ持ってなきゃいけない可能性があって、それが結構難しいのではないかという気がします。

そういう意味で何か集まりというのがあったほうが、かなり戦略的には物事は進むなという気はしますけどね。

荒牧:とにかく皆さま、それぞれ一家言をお持ちの方でそれはもう尊敬していますから、皆さんを集めて何かやれという気は毛頭ないんです。私が繰り返し言うのはこれはチャンスなので、そういう皆さんがやっぱり体制に対して不満というか注文があって、それが共通な部分で何かこう注文をつけると非常に少ないエネルギーで実現できるんじゃないかと僕はちょっと思っているんですが、皆さんいかがですかと。

例えばの話、協議会みたいなものを作って、私は東京の人間だからツーリズムに興味があって、入山料を取るとか。入山料を何に使うか知りませんけど、僕の理解では例えば間違っているかもしれないが、トイレなんてあれ、1回500円ぐらいかかると言っていましたね、専門家が。要するに全体をコマーシャル的にそろばんを弾くと。だからあれは全部一括して何とか協議会というので入山料を取れば、トイレはその代わり何回でも使ってよろしい。その代わり非常に透明な運営をしないとまずいけど、そこは日本人はできないのかどうか知らないけど。

それからさっき言ったブルドーザーの道というのも、実は私が言いたいのはあれを年々使っていると、どんどんはっきりしてきて写真に写るようになってきたんですよ。その中景ね。例えば河口湖から安いデジカメでぱちんと撮ってこういうのが写っちゃったらこれは由々しき問題で、あなた方、ブルドーザーを使っている人たちは自分の商売道具を壊しているんじゃないですかとそういう過激なことも言えるわけ。

協議会的なものである程度入山料、環境税、何とかというのも一つ。

山本:入山料というのはかなり進んだというか、割と過激な保全策なんですね。もう一つやわらかい方策だと、環境保全協力金制度。任意のお金で徴収するという方法もある。ただ人数を考えると、1人100円を払うようになるだけでものすごいお金が――。

荒牧:僕は千円払えばいいと思っているんですよ。都会の人間が、私が一泊二日で富士山に上る時、入山料千円取られますと言うと喜んで払いますよ。たいていの人は。

山本:僕もそういう調査をやったことがあって、日本人の感覚だと千円とか2千円というのはそんなに高いハードルではないような気がします。だから千円とか2千円の金額を設定されたとしても、それほど反対はないかもしれない。

荒牧:ただ問題は、不明朗だというのが気に食わない。

山本:そうですね。

荒牧:そこが気をつけていただきたいんですよね。それを皆やりそこなっているんじゃないかと私は疑っているんですけどね。

篠原:本当は、入山料なり環境税なりは取っていいと私は思います。

荒牧:私の聞いた限りでは、みんなそうおっしゃるんですよ。他の尾瀬でもそうだし、知床もそう。みんな失敗している。なぜですか。

篠原:それは明瞭じゃないからです。そういうものをきちっと明瞭にしてやらないからおかしくなってしまって。

荒牧:ということは、言いだしっぺの人に対しての信頼があまりないわけでしょう。

篠原:例えば外国なんかに行ったって、ユングフラウに登るためには必ず電車に乗らなきゃいけないんです。そうでしょう。高い電車賃の中に含まれていると。だからきれいになると。そういうふうにしていけば、登ってみたい。そうして夢にまで思いながら登っていくという。高い金を出してもいいという価値観。価値があったと認めている人がいる。そういう人たちでいいので、何でも数が上れば日本の観光地が一番まずいところは、何万人来たとか何千人登ったとか、そんなことばかりを目標にしているから環境破壊が進んじゃうと。だからそういう面では取ってもいいんですよ。

荒牧:これだけ「いい」と言って実現しないのは、何かよっぽど重大な問題があるかもしれないですね。

小野:でもシステムがないんでしょうね。どこの地域でも、やっぱり富士山なんか特にそうです。尾瀬もそうですけど、やっぱりマスツーリズムで人が入ってくる。それに関わる関わり方の中で日本独特のツーリズムの中に入ってくるエージェント制というのがやっぱりあって、あれを平らにしていくということがなかなか難しい。まず第一関門ですね。やっぱり料金の統一化ということでもマスでいきますから、さっきの先生のお話のとおり、誰も見ていないから、誰も行ったことがないから行こうというのが動機付けになっていればいいんですけど、隣の人も行ったから行こうという山になってしまっているのがおそらく今の日本の観光の誘因で、やっぱり観光のあり方というのが観光に対する一つの考え方みたいなものから整理されていかないと、なかなかうまくいかない。システムができていかないと。

荒牧:入湯税ってあるじゃない。

小野:ありますよ。

荒牧:あれ、何ですか。

小野:あれは温泉に1回入ればいくらという。

荒牧:だからあれは何のために払うの?

小野:何のためと言いますと。あれは税金でお金が――。

荒牧:あれ、税金ですか。

小野:税金です。お酒とかタバコは嗜好品だから税金がかかるということと同じように、温泉に入るのは贅沢なので税金を取りますと。

荒牧:そういう意味か。すみません。

篠原:観光税と同じです。

小野:そうです。富士山に行くのは贅沢だから(笑)。

荒牧:あと7分なので、すみません、ぜひご発言。特にご発言の少ない方はよろしく。どうも私ばかり喋っちゃって恐縮でございますけれども、基本的に私の提案はそういう、皆さん何か考えはないでしょうかと。チャンスじゃありませんでしょうかと。これだけですね。

荒井:環境保全、保護とかと言っても、やはりお金がかかるんですね。簡単にできるものではないんですね。ですから富士山スバルラインもそうなんですけど、建設費の償還期限は終わったわけですから、維持管理のための通行料を取っているわけですけれども、ああいうところをもう一度見直してそれに環境保全をするための費用を――。

荒牧:簡単なんじゃないの。謳っているんじゃないですか。

山本:スバルラインは謳っていないですね。

荒牧:謳っていないの。

山本:途中で環境保全のためのお金の徴収で話が進んだとも聞いていますが――。

荒井:そういう話がありましたけど、読んだらそうじゃないんですね。スバルラインだけじゃなくて、静岡県側のスカイラインですか。ああいうところも同時にやっぱり歩調を合わせてお金を取るシステムを作ると。

荒牧:それが一つの非常に具体的な提案ですね。いかがですか、皆さま。

本郷:提案はできるけど、誰がやるのか。

荒井:ですから、それはやっぱり協議会みたいなものを立ち上げてきちっと管理して、そして必要なところには必要なお金を配分するというふうなことはきっとできるような気はするんですけどね。

荒牧:どなたかおっしゃったようですね。

小野:さっき言った話ですよね。つまりお金は取っても、管理計画というか保全計画があるけど利用計画がないので、集めたお金をどう使うかという、そこができないとお金は集められないというのがおそらく本音なんだろうと思いますね。

篠原:だから利用計画をつけなきゃ。

荒牧:協議会というのは一つあるんだそうですよ、専門家に聞いたら。それが石見銀山だそうです。で、びっくりして電話をかけた。そしたら協議会の事務局は市役所なんですね。だけど非常に熱心でよくやられていて、ホームページなんか見ると。それであそこはゼロからスタートしている、極端に言うと。何もないところから、世界遺産になると押し寄せてくるかもしれない。それに対してどうしようという、ある意味で条件がいいわけですよ、だけど非常に熱心にやられているということを聞いています。僕はてっきり知床にもあるのかと思ったら、無いそうです。

本郷:今、協議会を作るというのは言うは易しで、大体自治体がそれをやらないとできないですよね。

荒牧:それでもですよ、やっぱり民間の人がずいぶん入るわけでしょう。

本郷:民間だけが集まって自主的に作った協議会というのは、日本の場合はあまりないじゃないですか。

荒牧:協議会だから官も。メンバーの1人でしょう。

本郷:言いだしっぺは誰かが一番難しいところじゃないですか。

みんな協議会は作ればいいと思っていると思いますよ。

篠原:その行政が、一般の人が協議会を作ることを行政がうんといやがるんですね。

だからどうしても日本の協議会というのは行政が後ろ盾にいて、そして協議会があって事務局はそういうところでやるとか。ここだったら観光協会もあるかもしれないけど。

荒牧:NPOで一番古顔というか、富士山クラブ、ご意見どうですか。

川島:おっしゃるとおりだと思っているんですよ。要は世界遺産にはこれをどういうふうにしたという道がもうできていますので、なるんだと思うんです。その中で我々として何ができるかという話を考えてはいますけれども、やっぱり今みんながおっしゃっていることはみんなそれぞれが思っていたことだと思うんです。ただ、どうやってそれを活かせるかというのがなかなか見つからないのが正直なところなんですよね。それを誰かがリードしてくれないとついていけないというのが、そこが――。

荒牧:それはちょっと弱いですね。民力がそのくらいだったら、僕はもうあきらめて東京へ帰ります。私がやろうなんていう気はないんだから。本当ですよ、それは。ですけど、今チャンスだというのが僕の唯一の理由です。

早川:とにかく今の世界遺産登録の動きは少し問題があると思うんですね、どんな内容になるか、何も見えてこない。

荒牧:見えてこないと言うのだったら、ここで協議会を作って「見せろ」ということだけは言えるんですよ。

早川:そうですね。個人ではできないことが協議会のような組織ではできることがあります。例えば世界遺産の勉強するにあたり講師を呼ぶにしても、個人ではなかなかということもありますので。

篠原:今、富士山に関わっているNPOの法人というのはどのぐらいあるんですか。

小野:山梨県、静岡県を合わせたら相当な数でしょうね。3040

篠原:そういうところの連絡協議会はまだないですかね。

小野:何度もやったんですよ。作ろうと思ってやるんですが。会合する度に喧嘩になってもうひどい目に遭いましたけど。

篠原:何で富士山は一つなのに、いっぱいNPOの関わっている人がいて、それでおそらく目的は同じだろうと思っているんだけれども、なぜまとまらないのかなと。私は遠くから見ていて、それにはお山の大将ももちろんだけれども、小泉さんが主張したような個人でどうのこうのと、倒せる奴は倒しちゃって自分だけ伸びるという発想がNPOの中にもあるんじゃないかなと思って。

小野:一つは、やっぱり自然保護というのをどのレベルで考えるか。プロテクションなのか、プリザベーションなのか、コンザベーションなのかということにおいてもやっぱり議論はあるんですよ。

篠原:そのとおり。

小野:だから手をつけるなという奴もいれば、手をかけなきゃだめじゃないかという奴もいる。ただ、やっぱりさっき渡辺先生がおっしゃったように、今生物の多様性ということを考えれば保護だけではなくて、いわゆる人間の生産活動が生物を支えているということも一つの論理として当たり前のこととして認知されつつありますけど、時代も変わりつつあると思うんですね。だから何かやっぱり組織としてのコアの部分と議論のコアと、両方がうまく合わさっていくとおもしろい。ですから荒牧先生が今回ご選択されたことというのはまさに時宜を得ているとは思うのですが。

荒牧:十分ではない。

小野:ですからこれを一つの議論のコアにするということは可能だと思うし、おもしろいと。

荒牧:限定です、私のポイントは。要するにチャンスだと。だから限定する。皆さんのお山の大将のそれぞれの理想はあるでしょう。だけど限定で何とかなりませんかという話も。

篠原:僕も荒牧先生が言わんとしているところがだんだん分かってきて、そういうふうにしてNPOがいっぱいいたりするんだけれども、そういうまとまりをしているのではないんですね。八ヶ岳だって八つの峰があるんだけど、美しい山だと。そういうことを抱えながら、峰があってもいいんですよ。だけども一つの山になっていくことが僕は今、荒牧先生が言っている、後々環境税を取ろうと、入山料を取ろうと、そういうところへ環境保全のための経費というものが下りてくるんじゃないかと。浸透してくるんじゃないかと。だから今がチャンスだと。

荒牧:下りるんじゃなくて、自分でつかむんですよ。

篠原:もちろん、つかむんです。つかむのだけど、そういうものが来る。で、それを伏流水だけで俺のところにえらく流れてこいなんて個人的にばかり考えているからだめなので、全体でもって考えていく器というのが、そういう組織を荒牧先生が言うとおりに。いいじゃないですか。

荒牧:どうもありがとうございます。時間が無くて残念ですが,ちょうどいい方向へ何となく雰囲気が。

どうもありがとうございました。もう1回申しますが、皆さんにテープ起こしをお送りしますので、それを圧縮していただいて戻していただいてまとめる。それから3回目、4回目は多分静岡でやります。その報告も全部オープンにしますし、これからの会議のご案内は全部いたしますので、いつでもお出でいただいて結構ですということで、どうぞしばらく見守っていただきたいのでよろしくお願いいたします。どうも今日はありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

(終了)

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○出席者の自己紹介     

早川 宏(富士山の文化的景観を守る会)

 富士山文化の「保全」と、文化財を活用したまちの「活性化」の活動をしています。建物や道などの「ハード」と、人の営みなどの「ソフト」の両面からの保全と活性化のために「吉田口登山道開山奉告祭」、「歴史探訪ツアー」、「まちづくり講演会」などの企画運営をしています。「八海巡り」や「山内神社巡り」は、点在する文化財を歴史に基づいて関連付けて面あるいは文化財群として保全することを目的としています。

山本 清龍(東京大学富士演習林)

 「小さい頃から父に連れられて菌類の採集を目的に四国の山々に登ったことが、森林科学(林学)を学ぶきっかけになったのでは」とのこと。現在、山中湖の湖畔にある東京大学富士演習林に勤務。同大学院農学生命科学研究科・助手。高知県出身。33歳。専門領域は造園学分野における公園計画および森林・環境教育。富士山北麓エコツーリズム推進協議会委員など地域の審議会、委員会の委員を務める。

荒井 光雄(富士に学ぶ会 理事長)

 昭和201110日生.趣味:山歩き・映画鑑賞・詩吟

小野 俊彦 (NPO法人アースバウンダー 理事長)

 1957年富士吉田生まれ、生来の生き物好きと学生時代の山岳部での活動、青年会議所での地域振興を通した経験から、富士山の環境資源を活かした観光のあり方としてのエコツアービジネスを1995年から始める。環境教育や地域振興などを中心に山中湖村を拠点として活動している。

舟津 宏昭(富士山クラブ山梨事務所所長)

 1973年北海道生まれ。都留文科大学大学院社会学地域社会研究専攻修了。2001年より富士山クラブの活動に関わり、現在富士山クラブ山梨事務所で富士山清掃・環境教育を中心に活動中。

川島 攻 (富士山クラブ事務局長)

 群馬県出身。慶應義塾大学工学部卒。三井造船、ドコモ・システムズで各種自動制御、地図を利用した都市計画業務に従事。現在富士山クラブ事務局長。

 

篠原 滋美(河口湖フィールドセンター館長)

 1933年生まれ.2006年(73才)

 1957年〜1994年 山梨県立高等学校教諭,教員,校長.

 1994年〜2006年(現職) 富士河口湖町立河口湖フィールドセンター館長

 2000年〜2006年(現在)山梨県環境保全審議会委員

 2000年〜2006年(現在)自然公園指導員(環境省自然保護局)

渡辺 通人(みちひと)(河口湖フィールドセンター自然共生研究室長・副館長)

 1975年東京農工大学林学科(自然保護学(動物))講座卒業.高校理科教諭を25年間務めた後現職.2005年より都留文科大学非常勤講師(環境生態論).日本鱗翅学会評議員を2期つとめ,現在野生生物保護学会監事.The Lepidopterists Society, 日本生態学会等会員.甲州昆虫同好会会長,山梨県環境アドバイザーなどをつとめる.富士山周辺の里山環境の再生と保全のために,ビオトープや絶滅危惧種の保全に関わっている.

本郷 哲郎(山梨県環境科学研究所)

  1987〜1997年東京大学の後、現職において、人類生態学分野の研究に従事する。人と自然のかかわり方の変化が、人の健康や生活にどのような影響を与えているかという視点での調査研究を進めている。現在は、県内の複数の地域をフィールドに、地域の自然環境の保全と住民のアメニティの向上が両立したいわゆる健康な地域生態系の構築を目指している。

荒牧 重雄(山梨県環境科学研究所)

 1957年〜2001年:東京大学地震研究所,北海道大学理学部,日本大学文理学部で主に火山学の基礎研究と教育に従事.元日本火山学会および国際火山学会会長,学術会議会員,富士山および浅間山火山ハザードマップ検討委員会委員長,現職は山梨県環境科学研究所所長.富士山世界文化遺産登録推進両県合同会議の二県学術委員会委員.火山災害の防災・減災対策や火山地域の環境保全・自然保護に関心を持っている.

 

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○フォーラムの実施要領

 フォーラムの主体は,複数回の会合及びその記録の公表・出版を行うこととする.会合の性格は,インフォーマルな座談会,懇談会,公開された講演会,パネル討論などさまざまな様式を,状況に応じて適用する.参加者の組み合わせも多様であり,地元一般住民,自然・環境保護の活動家・グループ,地元企業(観光産業を含む),市町村当局,各種団体,県の担当者,国の機関,国民会議の担当者などの中から,適当な組み合わせを拾い上げて,個々の会合を企画する.事務局は,山梨県環境科学研究所に置く.

 会議における発言は自由であり,基本的にはインフォーマルなもので,例えばある機関・団体を代表するという意識にとらわれて,発言が後ろ向きで硬直化するようなことは避けたい.したがって,この会議においてなされた発言は,ある意味で暫定的なものであり,個々の発言の内容について,後になって,厳密さをもって責任の追及がなされるようなことはないという合意が,予め参加者全員によってなされることとする.またこの会議の成果を特定の宣言やコメントとして発表することはしない.