フォーラム「富士山:世界遺産と環境保全」

第4回フォーラム

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第4回フォーラム「富士山:世界遺産と環境保全」  2007年2月11日開催

                                               静岡県田貫湖ふれあい自然塾にて

                       

○出席者(順不同)(自己紹介は文末に掲げてあります)

畠堀 操八(NPOシニア大楽 山樂カレッジ事務局長)

影山 秀雄(日本野鳥の会南富士支部幹事)

鈴木 義和(NPO富士山クラブ)

宮崎 善旦(富士山表富士宮口登山組合)

早川 宏(富士山の文化的景観を守る会)

広瀬 敏通(ホールアース自然学校代表)

平野 達也(ホールアース自然学校コーディネーター)

山本 清龍(東京大学富士演習林)

荒牧 重雄(山梨県環境科学研究所)

 

荒牧:それでは,始めさせていただきます.私は荒牧と申しまして,山梨県側の人間でございます. こちらの場所をアレンジしていただき,全体の準備をしていただいた広瀬さんと平野さんに100%お世話になりました.どうもありがとうございました.

 お配りしたプリントを確認していただきますが,フォーラム「富士山:世界遺産と環境保全」という1枚もの,新聞の切り抜きで,裏表で211日,今日の朝刊がちょうど間にあったのでそれがあります.それから富士山世界文化遺産登録推進山梨会議というプリントが裏表で4ページ,最後に10ページぐらいで,第3回のフォーラムの記録がございます.

 このフォーラムは今日が4回目でございます.最初の1回,2回,3回が全部山梨県側の方にお集まりいただいてやりました.お配りした第3回の議事録のようなものを毎回作っております.

 開催の目的です.世界遺産の問題が降ってきたわけです.そこからスタートしております.従って,これは世界遺産に関係するフォーラムです.また富士山だけに関係しているフォーラムです.皆さんがご存じのように,登録の作業が始まっているわけです.これは文化遺産で,自然遺産ではないというので,実際に自然保護や環境保全の活動家が興味をそらされたのではないかと,最初のころは非常に気にしていたのですが,実際に推進している県の人たちからすべて,富士山に関しては「自然は非常に大切です」「芸術的,宗教的なインスピレーションというのは,富士山の自然が美しいからこそであるため,決して自然の保護というものをないがしろにしてはいけない」と言っています.

 そうすると,今言いました立場でいうと,「これはある意味でチャンスではないでしょうか?」ということです.今まで皆さんは活動を一生懸命されていたということで,「こういうことをしたい」「こういうことをしたらどうか」という提言が活動のなかであると思います.そういう話を,いろいろな方にお集まりいただいて,非常にざっくばらんに,インフォーマルに意見交換をしたいと思います.それを記録に残すということです.

 実施要領というものをご覧になっていただくと,複数回の会合およびその記録の公表,出版――出版といっても,プリント程度です.本にはしません.地元の一般住民,自然・環境保護の活動家,グループなどいろいろな方を呼びたいということです.今日は,その方々だと理解しております.地元企業の方は今のところ全く入っておりません.市町村当局の方もおりません.県の担当者は,第3回のフォーラムに1人だけ出席していただきました.皆さんのお手元の資料の中に,その人の発言は入っております.

 これからいろいろと広げていきたいという気はございますが,会議における発言は自由であり,基本的にインフォーマルであるということです.なぜ,そういうことをくどく言うのかといいますと,例えばある機関や組織などを代表するということで,こわばってしまって,「あの時はああいうことを言った」「言わない」など,そういった後ろ向きなことでは困ると思うからです.皆さんは言いたい放題の放言をしてください.そのようなことをご了解いただいた上で,この会議に参加していただきたいと思います.また,この会議の成果を特定の宣言やコメントとして発表することはしないということも了解していただきたいと思います.

 3回目の記録は今,皆さんにお渡ししましたが,1回目と2回目は環境科学研究所のホームページから全部ダウンロードできます.とりあえずは何かご質問なり,このことについてきっかけの部分で分からないことがあれば,お答えいたします.いかがでしょうか?

広瀬:おそらく皆目分からないという状況から始まってると思います.できれば自己紹介から.

荒牧:そうですね.では順番にお願いします.

山本:私は名刺を差し上げる時にも紹介させていただいたのですけれども,山中湖の方で大学の演習林のほうの仕事をしております.何をやっているかといいますと,森林に関わる調査研究のほかに,自然公園,国立公園,国定公園などの公園の管理計画に関する研究と,最近では環境教育にもかなり取り組んでおります.共通するのは何かというと,良い自然体験というものはどうあるべきかということを,できるだけねちっこく考えていこうとしています.今回,こういう集まりに参加させていただいたのは,自分が普段仕事をしている山中湖が富士山と非常に深いつながりがあり,富士山が今後どうなっていくかということについて非常に興味があるからです.

 今日は4回目ですけれども,このフォーラムには,2回目に参加しています.そこではいろいろと発言をさせてもらいました.私は富士山を研究対象とすることもあるのですけれども,実は静岡側のことはというと,ほとんど知らないわけです.ですから,今日は,静岡県側ではどのように考えられているのか,富士山についてどのように思っているのかというようなことについてお聞きできればいいのではないかと思います.さらに,私なりにアイデアを出せるところがあれば,出したいなと思って参加させていただきました.どうぞよろしくお願い致します.

影山:私は地元の富士宮に住んでいます.野鳥の会の南富士支部といいまして,富士宮市,富士市を中心に活動している支部の会員です.同時に富士宮市の自然環境保全審議委員の役を仰せつかっています.また富士山とのかかわりで言いますと,子供のころから見上げている裏山ですけれども,その富士山が最近になって世界遺産に登録されようとしている中で,実は世界遺産というものがどういうものなのかよく分からないところがあります.しかし,国内で既に世界遺産になったところの状況を聞くと,必ずしも好ましい結果だけが出ているだけではないという話が友人からそしてマスコミなどからも流れてきます.その中で富士山が今世界遺産に登録されようとしている中で,推進派というか,特に経済効果を目的に登録を希望している人がとても多いような気がします.特に中心になっている行政やマスコミは,まさにその通りではないかと思います.そういう人たちではなくて,地元に住んでいる人たちが,実は世界遺産の登録に対してどのような気持ちを持っているのかということを聞きたいと同時に,自分もそれに対する気持ちを語っていきたいと思って参加させてもらいました.よろしくお願い致します.

鈴木:富士山クラブの鈴木です.私は富士山クラブに入りましたのが2004年の7月ですから,まだこのような仕事に携わって2年半ぐらいです.それまでは東京でサラリーマンをしてきました.もともと,富士市の出身なので地元だということで,たまたま富士山クラブのホームページを見て,「私も参加させてほしい」ということで富士山クラブのほうに常勤職員として入りました.それまで東京で生活していましたので,実は富士山を世界自然遺産にしようとする活動をはっきり言って知りませんでした.その後,駄目になってきたということで,少しぐらい役に立つような仕事をやりたいということで,「富士山」ということで,現在富士山クラブで,環境保護活動をやっています.

畠堀:実は僕も富士山クラブの一会員です.そのほか日本高山植物保護協会などいろいろと入っていますけれども.主にやっているのはNPO法人のシニア大楽(だいがく)です.要するにシニア向けに生きがいみたいなものを提供しようというグループがあり,そこのスポーツ部門として山楽(さんがく)カレッジの事務局長をやっております.私の興味はもともと登山でして,富士山に限らず,本当は南アルプスのほうへ登っていたいのですけれども,たまたま村山古道というものにぶつかって,それを開いたために,足が抜けなくなったということです.広く言えば,村山口登山道です.清水の清見寺あるいは田子の浦の富士塚から村山を通って.今の新6合目から頂上までということです.広く言えば村山口登山道.狭く言えば,村山浅間神社のある村山から新6合までの村山古道と定義しています.

 たまたま100年ぶりに,僕たちが開いたということになりましたので,しかも地元の古道復活にかける期待が非常に大きくて,何とかこれを村おこしにつなげてほしいということで,いまさまざまなことをやり始めております.その一覧がここ(後出)に書いてあります.その中に自然保護の問題ありますけれども,非常に特殊な問題として,100年前の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で壊された仏教遺跡がまだ土に埋まっています.この間も宝永通宝1枚が出てきたので,それは富士市立博物館に寄託しておきました.あるいは,十数年前に富士宮市がまとめた学術調査報告書によりますと,首なし石像が3体あるということですけれども,現在4体あります.その4体目がどこから出てきたかということですが,多分96年の台風17号で木が倒れた時に根返りによって土の中から出てきたと思います.そのように調査をやって保存しなければいけないというものがたくさんあります.

 そういうことも富士山が世界文化遺産ということになれば,併せてやっていただければ非常にいいのではないかと思います.これだけでもしゃべると,独演会になっちゃいますのでやめますけれども(笑い),必要に応じてお話ししたいと思います.よろしくお願いします.

早川:富士吉田からきた早川と申します.山梨からは静岡ではどういう方々が活動しているのかなかなか顔が見えないので,本日は皆さまがどのような活動しているか学ばせていただきたいということと,皆さまと今後いろいろな形でネットワーク化が図れたらと思いまして参加させていただきました.

 私どもの活動は,富士山文化の保全が中心です.畑堀さんは村山古道の保全活動をされていますが,私どもは吉田口登山道の保全などの活動をしています.

平野:ホールア−ス自然学校の平野と申します.生まれも育ちも千葉県でして,富士山のふもとに移り住んで8年ぐらいです.ホールアースではエコツーリズムという環境と観光をどのように両立していくのかということをテーマにした活動をしています.今回は,皆さんに声かけをさせていただいて,ホールアース自然学校としての状況をさせていただきます.どうぞよろしくお願いします.

広瀬:ホールアース自然学校の広瀬と申します.私自身は25年前に,この静岡の富士山側,芝川町で自然学校の活動をやり始めて,現在ホールアース自然学校とNPOのホールアース研究所というものをやっています.そちらにいる影山さんとは20年ちょっと前から一緒に,お互い若いころから富士山の青木ヶ原樹海周辺の調査やゴミ拾いや,当時は四輪駆動車もずいぶん入ってきたりして,それを毎週日曜日ピケット張って車を追い返したりするなど,いろいろな活動をしてきました.

 現在,自然学校や環境教育の全国ネットである(社)日本環境教育フォーラムの,自然学校センター長をやらせてもらっていまして,常任理事になっています.もう一つ,日本エコツーリズム協会の総務理事をやらせてもらっています.そういう関係で,ほとんど富士山に帰ってこられなくて,今朝も九州から帰ってきました.富士山のことを議論するのに地元にいないというような状況で,大変肩身の狭い思いをしています.

 昨年の秋口に,荒牧先生からお声がけをいただきまして,富士山が世界文化遺産になるという議論が急ピッチで進んでいて,それはそれでいろいろ意見があるだろうけれども,その機会をつかまえて,環境の保全という切り口をスパッと切り込んでいくようなことをやったらどうかということをおっしゃっていただきました.あらゆる機会をとらえて,富士山の環境について何らかの貢献ができるようなことをやりたいというということが,私たちの基本的な考え方なので,「ぜひお手伝いさせてください」ということで来ています.

 今回,この会の進め方についても,シンプルで分かりやすく,議論を通してお互いが学んでいけるような形になればいいと思います.そういう意味では,主張というよりも,いろいろとお伺いしながら,自分たちの考えを詰めていければいいかなと思っています.

 国内の世界遺産では白川郷と知床の2カ所は特に観光化が先行して環境悪化が懸念される状況が生まれています.世界遺産というきっかけをうまく生かせるのか,生かせないのか――このままでいくと行政主導で,私たちとしては遠吠えみたいな形で終わってしまうような情けないことになったのでは残念だという気持ちがあります.富士山は人によっては,手あかにまみれた自然という見方もあるのですが,私としてはそれどころか大変美しい自然をふんだんに持っている山だと考えています.この自然をどのように自分たちの力で守ることができるのかということについては,精いっぱいやっていきたいと思っています.よろしくお願いします.

鈴木:ここにあるような推進会議というのは,静岡側にもあります.

荒牧:あるんですか?

鈴木:「富士山世界文化遺産県民の会」というものがあります.富士山の世界文化遺産への登録について,民間の意見を行政に反映させようとするものです.

荒牧:それは最近できたわけですね?

鈴木:いいえ.去年…….

荒牧:文化遺産の話が出てきた後…….

鈴木:そうです.

荒牧:すみませんけれども,あとでメモでいただけますか? どなたに接触していいか.

鈴木:富士宮で森づくりをやっている「NPO富士山自然の森づくり」の仁藤 浪さんが「富士山世界文化遺産県民の会」の世話人の一人です.

荒牧:富士山クラブというのは山梨にもあるのでしょう? 違いますか?

鈴木:山梨にもあります.私は静岡の一人です.

富士山クラブは,団体としては,世界遺産になろうがなるまいが,要は富士山の自然を良くしていきたいという考え方はあります.

畠堀:自然遺産の時には富士山クラブの中心テーマとしてやったのですよ.

ところが,あれがつぶれましてね.実質的,ゴミ拾いとか自然を守る活動やった方がいいと.今ではメンバーが集まっても,世界遺産のことは話題にもなりません.

荒牧:しかし「今チャンスじゃないですか」というふうに言いたいのですけれども.

鈴木:ただ,私が富士山クラブに入った時にホームページに「富士山を世界文化遺産にしよう」というのが載っていました.それは今,消えていますけれども.

,以前は,自然遺産,文化遺産,というものを目指していたみたいです.

畠堀:自然遺産の時には一緒に.

荒牧:僕もそのように聞いていたから.

広瀬:文化遺産と自然遺産とは性格が違うということで,富士山クラブさんは降りたというふうに聞いています.

荒牧:山梨県の役人は少なくとも「いや,とんでもない.文化遺産といっても非常に大切ですから」と.私が提案しているフォーラムなどは,目的はざっくばらんな座談会でけれども,「自然保護というもののチャンスだから,大いに頑張ってやるべし」ということには,「全くその通り」と言いますよ.

畠堀:ごみの清掃などやっていますけれども.

鈴木:実質を取って.結果としてなればなったで,いいと.

荒牧:私のポイントは,実は私は東京の人間だし,今まで国立大学にいて,定年退職になった人間で,研究者だから何も分からないけれども.逆にいうと,お上があんなにガリガリやっているということは,ちょっと言えば,実現可能の部分がずいぶんとあるわけです.例えばゴミでも何でも,知らないけれども,僕はそう思う.

(宮崎氏出席)

宮崎:すみません,遅くなりました.

広瀬:よろしいですか.今日は進行役を特に決めていなくて,言っているのですが,今話が動き始めているなかで,最後の委員の宮崎さんがお越しになったので,自己紹介をお願いします.

宮崎:遅くなってすみません.富士山の表口の登山組合の組合長をやっています宮崎と申します.よろしくお願いします.

広瀬:私のほうで口を開きますと,荒牧先生にお声をかけていただいて,静岡側で,「山梨ではこういうふうにやっている」と話をうかがって,「静岡のほうでも何かやらないか」とおっしゃっていただいて,メンバーをいろいろとリストアップいたしました.その際に皆さんの名前を最初に挙げたのですが,行政の方ももちろん入っていました.行政のほうからはお断りが来ました.「こういう場で行政の立場で参加するのはふさわしくない」ということで今回は勘弁してくれというような話でした.

鈴木:県ですか?

広瀬:はい.また,富士山ネットワークおよび,森つくりなどの分野で熱心に活動されておられる方々も存じていますのでいずれ,お声掛けしたいと思っています.

荒牧:つくづく思うのは,地元の方々が富士山を見ている目と,東京の人間の目は違いますよね. とにかく自然保護の活動家の方が,ここで言わないといけないというような気持ちがあります.余計なおせっかいかもしれません.

広瀬:宮崎さんは,自然保護の活動家というよりはむしろ行政と民間をつなぐちょうど中間的な役割,半行政みたいな役職もやっておられるということで,富士山をめぐる文化遺産の流れについて,もしよろしかったら,お話をお願いします.

宮崎:これから,具体的な富士山の文化遺産の地域指定は当面は5合目以上の特別保護指定地域です.それに加えて,登山道が入っていくということです.あとは周辺文化施設というゾーン.富士山というのは全体が生活圏ですから,全体の中での位置付けという形で,私は位置付けているのですけれども.その中で今後規制の問題とかそういうものについて各山小屋の方々が危ぐしています.それだったら,情報を得て共有していく,環境とも共生しなければならないし,文化とも共生しなければならないというのが私の持論です.特に環境に関しては,環境省さんは数は少ないですけれども,担当ということで現場に来ていますから.文化のほうは,文化庁を中心に現場に来る担当がないですね,文化のほうは.その辺でちょっと危ぐしています.

 静岡県としては,登山口に民間団体,行政,大社はじめ議員さん,関係機関の方々で,静岡県側の世界文化遺産委員の協力会という形になっていまして,その協力会というメンバーが私たちのメンバーです.委員は学識経験者の方々とかそういう方々で主に形成されています.トータル的なまとめが,環境省さんが管理計画,環境省の自然環境管理計画を出されていて,今度は文化庁が管理計画を先般答申したと聞いています.それを受けて,おそらく1月いっぱいがリスト閉め切りのような形がありましたので,それに間に合わせるために年内に作って出したという,そういうのが一つの基準になっているはずです.

 当初,県民運動のような形に持っていって,それがイコール市民運動,国民運動みたいな形になって国に請願したのですけれども,当時は管理計画もなかったし,富士山を取り巻く正式な環境省の位置付けにはまっていなかったわけです.富士・箱根・伊豆国立公園内の中に箱根と伊豆は管理計画があり,管理計画があるということは自然保護法も正式な網がかかってきているので,その時に網をかけたという形です.それで自然保護法の中で動いてきたということです. 私たち登山組合として,富士宮口だけではなくて,やはりどういう規制がかかるのかということについてみんな最も心配しています.心配していればいいのかいといっても,多分マスコミが動き出すと悪者がこちらになりますから.それだったら,これからちゃんと会議に出ていって,言うべきことは言って,確認するところは確認していかないと,反対していてもできてしまいますから.富士宮口はそういう形でいってありますし,静岡県側は特にそういう形での連携は取っています.河口湖口は反対みたいです.それは,そこの市町村の問題と,民間と行政の問題ですからいいのですけれども.多分一市町村だとか,一地域が反対したからといっても,できてしてしまいますから.

 国民会議のほうとの連携というのは,私どもは委員でもないし,何の声もかかっていませんからちょっと情報が入っていません.市町村レベルだと,富士宮が周辺文化施設の指定が一番多いのです.しかし個々の管理計画を立てなければいけないわけですから,そうなってくるとやはり,民間,民間と言っても民間はそこまでできないですから.行政主導でそういう管理計画ができていくのだろうなと思います.民間にお金が潤沢にあって,学識経験者の方とかいろいろな調査だとかというものが全部できればいいですけれど,行政力でなければできないと思います.申請の項目が,どちらかと言えば歴史だとか伝統だとか学術的に基づいた資料でないと認めませんから.そういうものは市民の会ではちょっと無理ではないからということです.現在,そういう形で推移しています.

 ただ今後富士宮市においては,市民運動を起こしていきたいと思っています.反対の市民運動ではなくて,どうしたらいいのかという形で認識を…….十数年前に行われた「富士山を世界自然遺産に登録を」と言った時には,富士山の周辺市町村は反対まではしなかったけれども,当時は一切加わらなかったですよね.静岡新聞を中心に浜松,西部,中部が中心でした.富士山を見たらきれい,だから世界遺産――という単純なもので署名したものですから.そうなると,地元に何も説明がないではないかという形の中で,当初首長さんたちが「GO」を出さなかったので.

 今回は,どちらかというと.原則的には静岡県側の市町村の首長さんは前向きではないけれども,だれも反対はしていないということです.依頼があれば人を出して,頑張っていきましょうというスタンスでしょう.どちらかというと,賛成論者だと思います.これを契機にもう一度富士山を見直したほうがいいのでないかという形に持っていけたらいいというのは,富士宮の市長をはじめ,富士山にかかわっている周辺の首長さんたちの考えです.私の知るかぎりでは,そのような流れになっています.

広瀬:今だいぶ詳しく,静岡県側の流れも含めて経緯をお話ししていただいたので,だいぶ見えてきたと思います.

荒牧:今の宮崎さんのお話を聞いて,非常によく分かりましたので大変ありがたく思っています.

 これまでフォーラムの山梨県版を3回やり,今日は4回目です.3回目をやったら,出席された方が「われわれだけでこういうものを作ろう」ということで,今朝の新聞に出たのですが,推進はするということ.また,どこかに書いていますが,管理計画みたいなものについて提言をわれわれがまとめながら,われわれというのは主として民間のエコツーリズムなどをやっていらっしゃる方です.ちょうどいい機会なので皆さんにご紹介しました.

 私は東京の人間ですが,何でこういうことに首を突っ込んだかというと,偶然に山梨県に雇われて環境科学研究所の所長になり,なぜそうなったかというと,実は富士山で地震騒ぎがあって,富士山は噴火するという騒ぎはご存知ですね? 私はあれの委員長でした.私は火山の研究者です.こういうことに全く興味もなく知識もなかったのですけれども,3年間首を突っ込んでいると,どうしても言いたくなって,何だかんだと口を出してしまいます.今おっしゃったことは非常によくまとめていただいて,よく分かりました.

 一つ質問したいのは,おっしゃったように,最初は自然遺産運動でずいぶん盛り上がった.何十万という署名が集まったということです.何百万ですか? すごいですね,立派だなと思います.そういう動機というか,エネルギーがあったからこういうふうになった.今回は一体誰がやりたいのかというと分からないので,お聞きしたいのですが.よく分からないのですよ.

宮崎:静岡県もどちらかというと旗振りはいなかったはずです.

荒牧:しかし最初は…….僕がテレビを見ていたら,いきなり出てきたの知事さんですよ.

宮崎:ですから,その辺が県の職員としては.県レベルと民間も合わせて,そういう形のものがバタバタとして窓口の体制を整えたというのがあります.

荒牧:それでは受け身ですね.

影山:一番のきっかけは中曽根康弘でしょう?

宮崎:あえて言えば中曽根さんですけれども,中曽根さんを誰がはめたのかという(笑い).中曽根さんも自ら提唱したわけではない.ただ代表にそえたというだけです.ですから,中曽根さんが率先してこういうものをつくりましょうというのは,私が知っているかぎりでは,そういうことではないということです.

影山:そうすると黒幕はどこにいるのかいまだに分からないということ?

宮崎:あえて考えられるとしたら,前にそのような自然遺産にというような形の申請をして,その窓口になったのは環境省だったのですよね.それは間違いないですよ.

荒牧:ですけれども,今度は自然遺産ではなくて…….

宮崎:環境省がそういう形だったのですけれども,実際は駄目だということになって,文化庁になった.文化になったわけです.ですから,ある程度の仕掛けをしたのは環境省がらみかも分からないと思います.その中で,文化だということにシフトして,それから親方を中曽根さんにして国を動かそうという形にしたのでは.国が動かないと,やはり県もついてこないのですよね.

荒牧:宮崎さん,ちょっとさえぎるようですけれども,私も実は環境省の自然公園課長とか課長レベルはある程度知っています.これは全部発言を撤回して,記録に載せませんから.あの連中が熱心だとはとても思えないですね.

(笑い)

宮崎:熱心ではないです.そういう経緯があったという形です.それでボツになったものですから,そうしたら文化と言われたら,蔑ろにされてしまったという.環境省が.どちらかというと,文化庁が中心になってしまったということです.文化庁は初め富士山のことにはそれほど関心を持っていなかったですね.そうではないかなと思います.県の文化課なんていうのは何も分かっていません.

荒牧:ご存知でしょう? 2月15日に国民会議がものすごい会をやるのはご存知ですか? 何が出てくるのかというと,中曽根さんが出てきて演説をぶって,次が首相ですよ.そうすると,富士山が落とされたら,日本の政府のメンツがつぶれるわけです.それだけ熱心にやっているのはだれなのだということを聞きたい.それが分からなくては,勝負にならない.

(笑い)

宮崎:ですから,どういうことをこの会で提言するのかということです.

荒牧:今おっしゃったように,この会は何の具体的な目的もない.富士山をもう少しきれいにしてほしいということは確かにあります.きれいといっても,ゴミとかトイレではなく,もう少しいろいろな意味です.自然保護とか環境保全の人たちで活動家とされている方がたくさんいるから.黒幕が誰であろうと,このように動きだしたのであれば,飛びついてちょっとでも提言すれば,あなたの関心のあるところは少し棚ぼたみたいにもうかる

宮崎:私として提言するということは,今は自由ですから,一向に構わないと思うのですけれども,それでは,それはどう生かすかということになると,一体どこへ訴えてどうするのかということです.先生が言われる,目的というよりは,いろいろと話し合って富士山を原点からもう一度見直すということはすごくいいことです.しかし,世界遺産の会議がそういうことをやっていないのかというとやっています.ネットワークもやっているわけです.全部やっているのです.ですから,その辺の持っていき方というのは一つ間違うと誤解されかねない可能性があるのではないかと思います.

山本:話がどうしても上からの話になってしまっているのですけれども,先ほどのお話しですと,協力会を形成したりして,割と草の根というか下からの運動もやっていこうとされていますよね?

宮崎:ちゃんとやっているのですよ.やっていないのではなくて.

山本:はい.その時に,自然遺産の時には私たちは利害関係者だったという意識がかつてはあったわけです.文化遺産になると,私たちは利害関係者ではないという意識にどうしてもなってしまいますか?

宮崎:それもありますけれども,基本的に自然遺産の署名運動の時には,市町村にも,私たちの関係者にも一切話がなかった.正式には一切話がなかったわけです.その中で,マスコミ等が動いて署名運動が動いていったわけです.ですから待ったをかけたというより,異論を唱えているうちに,その異論が通ったのではなくて,たまたま国のほうが自然法が固まっていなかったという問題があったり,管理計画もなかったりというような問題もあったりして,おじゃんになったものですから,作戦を変えたということです.ですから,そこから底辺は動いていただろうということです.先ほどの先生の質問だと,そこから動いていただろうということです.全くの白紙にして,さらなる世界遺産の仕掛けをしたという底辺がそこにあるのではないかと私は思っています.ですから,黒幕は分かりませんけれども,そういう形の流れで来ていたことは確かです.

 今回は協力会の協力とか,県もわざわざ登山組合を1カ所に集めろというのではなくて,全部来て説明をしたり,質問があったらお願いしたいとか,「不安があるのだったら,呼んでいただければ説明します」ということで,静岡県には3つの登山組合があるのですけれども,ちゃんとそこに来て説明をしています.そういう形のものは前よりもだいぶ違っているということです.

山本:文化遺産で話が進んでいく時に,どうしても自分たちが話題の中に入っていけないのではないかという意識は影山さんや畠堀さんのほうにもあるのですか?

影山:先ほど,富士山クラブの話もあったのですけれども,過去に自然遺産で登録するには,県内で自然を対象とする団体がかなりそこに参画していました.署名運動をしたりして,第1次の盛り上がりがあったのですけれども.自然遺産としての登録が不可能ということになった時に,「ああ,そうだったのか」ということで,そこで何でみんなが「それじゃ,自然遺産として登録されるにはどういう整備をしたらいいのか」ということを考える場をつくらなかったのかというのが一つあります.

 その話が盛り上がる前に,手のひらを返したように,作戦を変えようというような形で「文化遺産でいこう」という形になったのは,何か安直というか,そのようなイメージを受けたわけです.「自然遺産で登録しよう」ということで盛り上がった人間は,その時に気持ちが切れてしまったわけです.「われわれがあんなに一生懸命やったのに,それがポンと蹴られてしまって,今度は役者が変わって,文化遺産化か?」と.その辺のやり方が,当時一生懸命やった人たちにとっては,納得できないというよりも,急激に気持ちがさめてしまったきっかけになったのではないかと思います.

広瀬:そういう意味では自然遺産の時は,情報量は極めて少なかったけれども,結構草の根的な動機はあったし,われわれもいろいろなシンポジウムに出たりしてきたのは覚えています.文化遺産は,今度は草の根的なというよりは,きわめて上の方で仕組みがつくられていたという感じはします.この辺のところは,宮崎さんも言われたように,そうはいってもほぼできるだろうというのであれば,それをより使いやすい形にするという考え方もあってもいいのではないかという気がします.

 たまたま私たちはふもとでこういう自然体験の活動をやったり,環境教育の活動をやったりしているので,そういう観点からいろいろ意見を言うような場をつくるとか,あるいはムーブメントを生み出すとかというようなことは非常に意味があると思います.それは直接ピンポイントのところにいけば,労は少なくていいかもしれないのですが,とりあえずそのピンポイントがどこだか分からなかったら,山梨の皆さんがやったような形でやるのもいいのではないでしょうか.

 最初の話に戻すと,われわれが一番の問題だとして感じているのは,山梨,静岡の連携のなさです.とにかく,これからも山梨側,静岡側の中でもいろんな意見があって,お互いが足を引っ張るのではなく,意見があることを認めた上で一緒にやれるような関係づくりを,これをきっかけにぜひ進めていきたいと思います.例えば,みなさんはこういう場がないと,なかなか顔を合わせないでしょう?

鈴木:先ほど言いました静岡側の県民の会と今度山梨側でできて協議会の方々が一緒に集まって意見交換みたいな場を設けてはどうなのでしょうか.そうすると,また今おっしゃったようなお互いが意見交換して何か出てくるかもしれません.

荒牧:質問ですけれども,ふじさんネットワークとおっしゃったのは,事務局はどこにあるのですか?

宮崎:事務局は県です.ふじさんネットワーク自体は静岡県です.山梨には山梨で,別途にあるのなら,あるかもしれませんけど,私の知っている限りは静岡県側のふじさんネットワーク.

早川:山梨では県観光部観光資源課富士山山岳担当が富士山ボランティアセンターをつくっています.現在エコツアー関連団体が21ほど登録されています.事務局は富士河口湖町の山梨県立ビジターセンターの中にあります.ホームページがありますので,活動の内容を知ることができます.http://www.yamanashi-kankou.jp/fujisan3776/fujisan3776001.html

畠堀:ふじさんネットワークというのは,県の環境森林部が音頭を取って,かなり金を使っているのですけれども,富士山の南斜面に植林を行っているわけです.草刈りも含めて.

鈴木:一般の工場とか,そのような民間企業とか,ほかにいろいろな団体が…….

畠堀:相当いろいろな団体が入って.

荒牧:今おっしゃっているのはふじさんネットワークですか?

鈴木:はい,そうです.

荒牧:そういうのは山梨にはないのでは?

宮崎:山梨はゼロではないけれども,ちょっと規模が小さい.組織力だけでしたら,静岡県のふじさんネットワークの方が圧倒的です.

畠堀:しかし,それ以外の目的で動けと言ったら,多分動けないと思います.

宮崎:ふじさんネットワークは県の環境森林部が窓口になっていますから,どちらかというと自然保護団体ないしは富士山に関心を持っている団体で形成していますから,どちらかというと世界遺産の文化登録の運動の前といったら語弊がありますが,富士山憲章というものを両県で一本化しましょうという一つの組織として出来上がった経緯があります.文化遺産ということで出来た組織ではありません.

畠堀:文化遺産は県庁の生活文化部に世界遺産推進室という別の部署がありますから.宮崎:別の部署もありますし.それを目的につくった組織ではないものですから.

宮崎: クリーン作戦のゴミの清掃運動でも,静岡県側は「いつまでも美しくする会」,山梨県側は「徹底してきれいにする会」というふうに「きれいにする会」と「美しくする会」があるのですね.そういう形になっていますから,全部が全部一本化といってもなかなか.県の力関係もありますし,なかなか難しいですよね.ですから,私は民間だったら,先生が提唱されたような形で話し合いましょうということができると思います.大きな組織を抱き込もうということは,ちょっとエネルギーが必要です.

広瀬:おそらくこの趣旨からすると,ふじさんネットワークを取り込むというのは,むしろ県の組織なのであり,ちょっと意味が違うなという感じがします.

宮崎:県が「こういう組織をつくってくれないか」と言うのであればいいのですけれども,どちらかというと,こちら側が主導で考えて,県が入ってくれということですよね.ネットワークに入ってくれということは.県に入ってくれと言っているのと同じです.組織は建前と違っているだけであって,役人で言う建前上違うということで,あえて言えば,実際は事務局をやっているということは県の組織です.建前上は民間ですよというけれども,事務局と金は全部県が出しているわけですから,簡単に言えば県の組織です.ですから,それを抱き込むというのは非常に難しい.

 また環境省が昔「美しくする会」というものを統合した富士山美化推進会議の設立案を出して,一応設立したのですけれども,資金的にも当該年度がアニューという自然食とセブンイレブンの緑の基金という形で1000万円ずつ出して2000万円の基本基金で動き出したのですけれども,翌年アニューが「景気が悪いので,勘弁してください」と1000万円になり,その翌年セブンイレブンが富士山クラブの基本金に持っていきますということになったものですから事実上200万円しか残らなくなってしまいました.金が200万円になってしまったら,役人は金がなかったら何もできませんから,あの方々は.権限と金を握っているからできるわけです.ですから,富士山美化推進会議も,今残っていれば結構両県の橋渡しになったのですけれども,富士山憲章という形で世界遺産の自然保護を通す運動の原動力になったのですね.署名運動とそういうことで,環境省も音頭を取って美化推進会議を作って,静岡県だ,山梨県だといっていないで一本化しましょうということです.それで,「美しくする会」も「きれいにする会」もみんな属して一括にしたけれども,基本基金がなくなっちゃったものだから,なくなっちゃうと弱くなっちゃうのですよね.そういう形で,最近文化が頭角を現してきたという.ですからネットワークの中でも,本当の自然保護団体の方々などは面白く思っていない方もいるかもしれません.カゲヤマさんが「面白くない」とは言わなかったけれども,基本的には自然の時には,結構自然保護団体が動いたのですよね.しかし,今回はどうも自然も一部なのですけれども,文化が主導になって,それでは本当の文化団体が動くのかといったらなかなか動かないもので,県が主導して動いたということです.行政が主導して動いたという.ただし,声は立てたよという形になっているということだと思います.

 自然保護団体の方々というのは,自分たちの目的がはっきりしないと動きませんから.何の組織もそうですけれども,特に自然保護団体の方々.

広瀬:宮崎さん,民間で富士山の世界遺産推進に向かって活動している団体というのはあるのですか?

宮崎:いいえ,ないです.

広瀬:民間で富士山を世界遺産にしようという動きを,具体的に活動に掲げている団体というのは…….

宮崎:掲げているのはないということ.

広瀬:例えば文化団体でもないわけですよね?

宮崎:ただ,今後富士宮市に限っては,一応この間もシンポジウムを文化会館でやりましたし,それは役人に任せておけばいいわ,国民会議に任せておけばいいというだけではなくて,たまたま富士宮市は浅間大社をはじめ白糸の滝とか,いろいろな関係で文化庁管轄の施設が多いものですから,さらに,みんな富士山と直結しているのです.ですから,施設周辺,文化施設に位置付けたもので,そういう形の中で,これを市民運動にこれから仕掛けたいなと私は個人的には思っていますけれども.

広瀬:浅間さん関係の団体はやっているのではないですか?

宮崎:やっていない.

広瀬:やっていないのですか.

影山:世界遺産に向けてはやっていないということですか?

宮崎:ですから,これからだと思います.先ほども少し言いましたけれども,去年まで県の文化課も,私たち協力会を集めるにも,書面には世界遺産という言葉は使っていないのです.明らかにそれを視野に入れていたのですけれども,文化的な富士山を見直す目的での管理計画でした.文化庁の管理計画です.前にやったのは,環境省の自然管理計画です.ですから,今度は正式に日本の候補リストに載りましたから,これからがどういう県民運動をやるのか,市民運動をやるのか,町民運動をやるのかという時期に来ているのではないかと思います.ですから,こういう会議だとか…….日本の黒幕というのはよく分かりませんけれども,今はどちらかというと本音は別にして,国も県も建前上は地域の方々のご意見を聞くというスタンスになっています.ですから,昔だったら言えなかったのですけれども,今は結構言えるのですよね.それが通る,通らないは別にして.もしやるとするならば,これからになると思います.

 その時に,文化だけでなく自然も環境も合わせた中で,やっていくことが大事だということは,みんなが言っているのです.

広瀬:今,いろいろな環境保全の取り組みが世界文化遺産の会議の中にも必要だというのは,現在やっている動きの中に当然そういう話はあるはずで,やっていると思うのですけれども,ここの場というのは,それがカチッとできている委員のメンバーの会ではなく,もう少し地元で活動している皆さんの顔ぶれの中でそういう話をしようというところにミソがあるわけです.そういう意味では,山梨の方では過去3回これをやっていて,これは全部読んでいないのですけれども,目を通してみると,とりあえず文化遺産の制定に反対しようというよりは,どうせなってしまうものならば,何とかそれを使おうというトーンだと思います.ではもう一歩進めて山梨と静岡の民間の皆さんが一緒にやったらいいではないかということ.そのほうがパワーも大きくなるだろうし,声も大きくなるだろうと思います.

宮崎:あとは目的だと思います.私は,先生が言われたようなフリーのトーキングというのは大好きなのですけれども,一般的に人を集めるときには,目的のない人に限って目的を聞きますから.

(笑い)

 ですから,その辺はしっかりしておかないと,ちょっとボケるのではないかと思います.誤解されるというか,本来の趣旨が誤解をされる危険性があるということです.私は社団法人の観光協会の会長もやっていますので,この間の富士山シンポジウムなどを見ると,富士宮は今,富士山学習という形で中学生がいろいろな地域の題材を中心に勉強を1年間して発表しています.富士山をテーマにした,富士山学習だから富士山だけだというわけではないのですから,河川だとかいろいろな市街地のことなどを勉強するのですけれども,代表の中学校が,3つか4つ出たのが,基本的に私たちの力で今できることなんだと言ったら,やはり富士山をきれいにしよう,町をきれいにすることからやっていくという形で,子どもたちが提唱したのは清掃運動です.それを大人が提唱しない手はないのではないかという形で,私は富士宮市をきれいにしようということ.世界遺産になる富士山のふもとの町が汚いというイメージがあったらよくないという形の運動を展開に入っていくということです.これは自然保護団体も共通する点だし,文化にも共通する点なのです.そういう役割分担があろうかと思います.どうも自然保護団体というと,誤解されちゃいます.もしかすると,動きが誤解される危険性もあります.

荒牧:このフォーラムは一応,私が中心となって,環境科学研究所が提案してやっているもので場所を提供しているのですよ.ですから,ある意味で勝手にやれるわけで,その中身というのは繰り返し申し上げているように,世界遺産登録問題に対して,どうも自然保護,環境保全が重要になる.それを推進する上で今がチャンスだから,みんなお互いに情報交換をしてというそこまでです.情報交換の結果として,山梨にこういうような具体的なグループが誕生しつつあります.私は,このフォーラムの十分すぎるような結果ではないかと思います.山梨の,民間の方々がこういうことを思っていて,自分でできれば,静岡の方と一緒に話をしたいという人がいっぱいいるので,第5回をまたこちらでできませんでしょうかというので,5回目のフォーラムには山梨サイドの人たちが何人か来ると思います.そういう人たちは,先ほどお聞きしたようなふじさんネットワークのような,例えば一般民間人だけではない方もいっしょに入っているのではない,今のところそうではない団体なのですけれどもね.そこからスタートするのも悪くない.4回目,5回目,6回目くらいは一市民の資格で集まって情報交換を,あと2回ぐらいできるのではないかという気がするのですけれどもね.それは一つの思いつきですが,皆さんはどう考えでしょうか?

 繰り返しますけれども,山梨の人たちは静岡のことを知りたいのです.よく知らないと思っています.私もそうかもしれません.ですから,こっちへ来て,ぜひ皆さんと話をしたい.この会は初めから情報交換と意見交換だけなのですから.それが基本的にいい方向にいってほしいと念じているわけです.

広瀬:意見が食い違う場をつくってもべつに構わないと思います.ただ,一緒に話をする場はぜひ必要だと思います.

荒牧:早川さんは黙っているから言いますけれども,彼は最初,世界遺産には反対でした.3回目で「私は反対です」と言っています.「反対だけじゃ,みんなびっくりしちゃうから追加の発言をしてください」と.追加の発言があとで書いてありますが,どういうことかというと,早川さんは文化のほうに興味があって,富士吉田の動を文化遺産の保全を一生懸命考えておられる.だけども,彼はやはりこういうふうに動き出したのだから,反対とはいってもこういうグループに入って,少なくとも誰が何を言っているのかを知りたいということで来ているのです.だから,そういう線もあるのではないですかということです.「自分はこうする」というというのなら,その時にその人が決めればいいことです.私は,そこまで言っているのではありません.

影山:個人的な意見を言わせてもらっていいですか? 私は今日,どういう内容か全く分からずにここに来たのですが,希望としては,この会に参加する人たちが,例えば富士山が世界遺産に登録されるについて,登録されることによって生じるメリット,デメリットを全部出してもらったらいいのではないかと思います.

 そのメリットをもちろん共有する,またデメリットがあれば,なるべくそれを少なくするような意見がそこからまた出てくると思います.

荒牧:悪いけれども,世界遺産の専門家ではないから,分からない.

影山:そうじゃなくて,そういうことをみんなから聞きたいわけです.

荒牧:それをやると,時間を食ってしまいます.私の興味は,自然保護と環境保全を,世界遺産というからチャンスだから,少しでも突っ込んでやるということをやりませんか? その話をしてください.それだけなのです.全体の話をすると,これはすごいことになると.

影山:でも,それが素材にならないですかね?

荒牧:素材にはいいです.

影山:何とかするのではないのですよ.その素材が欲しいのです.だから,言ってもらいたいだけなのです.それをまとめようというのではなくて.

荒牧:結構ですよ.結局,だから意見交換と情報交換でしょう?

影山:そうですね.

荒牧:それでしたら十分です.

山本:さきほど鈴木さんからうかがったら,山梨のほうが世界遺産に反対している地域が多いのではないかと仰っていましたが.

荒牧:いや,反対とはっきり言ってないでしょうね.

宮崎:いや,賛成していないことは確かですね.河口湖町は.

荒牧:マスコミだって今虎視眈々(こしたんたん)ですよ.私にも盛んに聞かれるから,私はあんまり知りませんと言っている.

宮崎:本当は私流に言わせれば,自然遺産でゴミだとか,そういうものが自然遺産にとって駄目だったという単位になのですから.イラクには核兵器があったそういう形だったら,そこを解除すれば,世界自然遺産で勝負をかければいいというのが正論だと思います.それで,ころっと文化遺産に切り替えたというところが,調べてみたら,文化遺産だ,文化だ,自然だという,世界遺産の登録をしたいという形の,誰かが動いたのです.何かの機関が.文化と自然なんていうのは,日本国民というのはすぐ忘れるじゃないですか.文化も自然もあんまり関心がないのですよ.ですから,そこをどのように関心を持たせて,富士山をきれいにしたり,経済的にも,環境的にも,文化的にも共生できないかというのが私の考えです.

荒牧:全くおっしゃる通りです.

パッケージツアーのビラがあるじゃないですか.必ず「世界遺産」が押してあるのですね.これは,世界遺産にするとうれしい人がいっぱいいるのだなと思いますね.

宮崎:熊野古道は,熊野古道で規制がかかっていたもので,そのままかかるだろうといっても,熊野古道よりも富士山のほうが生活圏に入っちゃっているんだよね.ですから,その辺がどうなのかなというのがあります.誤解とか,デメリットとか,規制とか,不安とか,メリットがどうこうというのは,それをまとめあげて提唱するということではなくて,そういうことも話し合うということも一つの方法ではないかと思います.

荒牧:おっしゃる通り.

宮崎:デメリットがなかったら,やらないとか,やるとかということではなくて.当事者としては,規制がこれ以上かかると,やはりどういう規制がかかるのかという不安はあることは確かです.そこが,どちらかというと大義にしているのですよね,河口湖町は.それと山梨,特に富士5湖の河口湖,吉田河口のあたりは,富士山が経済圏の真っただ中なもので,

荒牧:静岡はそれほどじゃない?

宮崎:はっきり言って,静岡県は伊豆もありますし,西部もありますから.富士山は象徴としては誰もが認めていますけれども,経済効率というのは数字的にそれほど出ていないのではないでしょうか.

荒牧:ということは,「結構ですね,世界遺産にしましょう」と言いやすいわけですか?

宮崎:逆に言いやすいです.

広瀬:だから反対する人はいないでしょう.

宮崎:いないです.

荒牧:だから,その点は山梨と一緒にならないと.

広瀬:だから,山梨の人は知りたいのですよ.世界遺産の登録についてどういう意見を持っているのか.

荒牧:ぜひ聞いてください.意見を言ってほしい.

広瀬:共通の認識を持てば,きっと話し合いもできるのですね.

荒牧:そういう意味で,このフォーラムはある程度意味がある(笑い).

広瀬:このメンバーの中にも,恩賜林関係の方はおられないですよね? ある意味で一つ焦点的な存在でもあるわけですけれども.

荒牧:そういう意味では,最初のフォーラムをやる中で,これからどういうことを狙っているのかというと,実は今座談会の段階なのですが,懇談会,それから講演会とかパネルディスカッションとか,それから今言った山小屋組合とか,旅館組合の人を呼んでくるとか,何だってやり得るわけです.できますよ.しかし,私の好みは一般の市民が,特に自然保護の観点から,ある程度形をなしたグループがあって,何かの発言提案をするということで,そのことによって官側というか行政サイドでも,それを受けて立つということがやりやすいわけです.僕は,世の中はそういう方向だと理解しています.いかがでしょうか?

宮崎:実際には,私もそれがいいと思います.しかし,日本人,特に静岡県は学者に弱いのですよね.著名人とか学者に弱いのです.

広瀬:行政に弱いというのも一つの特徴だし.

宮崎:そうですね.しかし,私はそのほうが…….はっきり言って,影山さんと広瀬さんが声をかけたら,それで富士山クラブが仲間にいるなと言ったら,まず自然保護団体以外の団体はちゅうちょするでしょう,県,行政は.

 そこで,先生の何だか分からない環境科学研究所なんていうのがあると,「ああ,これはこういうふう人があれだったら,何となく行政も絡んでいるのかな?」「バックについているのかな?」と思い込むのですよ,人間というのは.

(笑い)

荒牧:だけど,おっしゃるように実際は,はたから見ると,私も学者みたいに見えるから,何となくみんな勘違いするわけですよね.そういうところがあって,ある意味で宮崎さん,やりやすいことでもあるんだよということをおっしゃっていただいたのかもしれないけれども,それは私の…….ただ,ある意味では,権力側というのは,今の構図ではどうしても市民側のインプットがあると,やりやすいというところがあります.それなら,市民サイドも,それが分かっているのなら,それにつけ込んだどうですかというのが僕の意見です.

宮崎:組織力をある程度持って,影響力を持とうというのなら,組み立ての仕方があるのだし,人選の仕方もある.ただ,現段階としてはいろんな人の意見を聞いて,「どうでしょうか」というやり方があるのではないかと思っているのですよ.はっきり言って,今富士山クラブと広瀬さんと,それとワタナベさんの名前を出したら固まっちゃいます.

(笑い)

 それだけ影響力のある団体だし,影響力のある人だから.

荒牧:そういう強い影響力のある団体あるいは人はいないのかね,山梨には.

山本:そうですね.山梨は割と群雄割拠みたいなところがありますね.

荒牧:小さなお山の大将がいっぱいいるわけ?

宮崎:というよりも,私は解釈しているのは,静岡県側は国有林です.山梨県側は県有林です.県企業局が仕切っているのです.スバルラインの道路.有料道路.

荒牧:そこが違うのですね.

宮崎:大きい違いがそこにあるということがあります.

なにがそう言うことがあるかといいますと,山梨県は富士山と経済的にも一本化できるということなのですよね.静岡県側は,富士山と言っても,富士山の施策をバンバン出すということはなかなか難しいのです.名称でも静岡空港とか,富士山は静岡県のシンボルだとか,富士山憲章なんて誰も逆らわないけれども,予算を注ぎ込んで何かをしようというと「待った」がかかってきます.「待った」がかかってくるというより,観光分野でも環境分野でも,アルプスでも全部が抱えていますし,経済がほかのことでも動いているのです.山梨は,経済と富士山が直結しているのですよ.そういうことがイコール民間の方がおのずとくっついていますから.

荒牧:そういうことも含めて,もう少し両県でこういう話し合いをするのも悪くないのではないかという気がしますが,どうでしょうか?

 それで,回目,6回目あたりを山梨側からも来て,少しね…….これの延長みたいな,目的をあまりはっきりしなくてもいいからという気がするのですけれども,どうですか?

広瀬:世界文化遺産の動きというのはかなり急ピッチでというのは最初にお話しした通りです.しかし,われわれもそれに合わせてあまり急ピッチに物事を考えても,多分いい結果にはならないだろうと思います.何度かこういうざっくばらんな形で話をさせてもらったほうがいいと思います.

 私から言わせてもらえば,一番の成果に設定できるのは,とりあえず顔の見えない,名前は聞いているけれども顔を合わせることができなかった皆さんが,一つの場で話ができるような環境を生み出せれば非常に成果があると思います.それをまずやってみるといいだろうと思います.

山本:私も,今広瀬さんがおっしゃったことに全く賛同するのですけれども,一つ参考になる事例はないだろうかと考えてみました.例えば尾瀬で,保護を推進していこうとしたときの話ですけれども,3県の知事の会合がきっかけになって尾瀬保護財団が設立されたという経緯があります.そういう政治的な動きがいいのかどうか分かりませんが.例えば山梨県側の方々と静岡県側の方々がスムーズに話に入っていくためにはどうすればいいのかと考えると,現在発足しつつある世界遺産登録推進山梨会議の趣意書において管理計画を検討するなどかなり具体的に書かれているので,例えば,「民間の方々が勝手に個々の管理計画をつくってよいのか」であるとか,「もう少し広いメンバーを集めなければいけないのではないか」という意見が当然あるのだろうと思いますので,こうした山梨県の動きをとっかかりにして両県でどのようなことができるかを考えていくことがよいかもしれません.おそらく静岡県が考えようとしていることと山梨県の動きは違うものかもしれません.この趣意書みたいなものをゆっくり考えていくことで,スムーズに山梨県と一緒に集まって議論ができるのではないかなと思ったので,ぜひメリット,デメリットとかもあわせながら,議論していくこともよいのではと思っています.

広瀬:時間の関係もあるのですけれども,今日簡単に最初に自己紹介をしただけで,始めているのですが,それぞれの皆さんはいろいろな取り組みをやっておられると思うので,そういうことを少し,例えば5分程度発表していただくとか,つまりプレゼンの時間をちょっと持って,「そういうことだったら,われわれもいっしょにやりたい」というようなこともあるのではないかと思います.ですから,個人の個の資格でざっくばらんに話をするということを前提にしながらも,個の皆さんの背景には組織や団体があるので,そういう団体としての取り組みについてもう少しお互いに知り合ったほうがいいのではないかという気がします.

荒牧:自己紹介的なものも含めて,プレゼンテーションの時間を.なるほど.

広瀬:数団体に持ってもらって.

荒牧:私どもがこちらにうかがったのは,実質的にいろいろなマネジメントというか,仕切りを広瀬さんにお願いしたこともございまして.できれば,そうさせていただけるとありがたいと思います.5回目,6回目は私と広瀬さんでご相談して,今言ったような方法で皆さんにご提案して.それで様子を見て,駄目だったら引き下がるし,皆さんから「これでいい」というご意見が出たらそれでいいと.

 繰り返しますけれども,今のところは懇談だけの場でございますので,こちら側で何か提案しようとかそういうことはございません.

早川:活動報告だけではなく,例えば世界遺産に対してどう思うのかというふうなテーマを決めて,会としてのプレゼンテーションをしたら良いかと思います.

広瀬:世界遺産に対してということでもいいと思いますし,あるいは自分たちのそのような取り組みが世界遺産というテーマに対してどのようにアプローチしているのか,あるいはできているのかということ.何らかのかかわりをくっつけていくということ.

広瀬:おそらく,世界文化遺産に向けての活動というのは,どこもあまりやっていないと思います.ですから,自分たちの活動と世界文化遺産とつなげた話をするなら…….

宮崎:言っていいですか? 発表しながら,私もそうなのですけれども,ほとんど人が世界遺産というのはどういう機構になっていて,ユネスコだとか言葉があるけれども,定義上のことなどほとんど人が分かっていないのですよ.私以外多分分かっていると思うのですけれども.ほとんどの人が世界遺産というのは何だか分からないけれども,「いいことだな,頑張ろう」というというところなのです.

荒牧:どうしたらいいでしょう?

宮崎:だから分かる人がいれば.

荒牧:呼んできて勉強会?

宮崎:みたいなものも,何回かのうち1回ぐらいはやってもらえたらありがたいと思います.それで,どうして世界自然遺産から文化遺産に.また文化と自然という定義も分かっていないで,突っ込んだ話をしていくということになると,どこかで壁にぶつかるようなこともあると思います.何か勉強する機会が必要だと思います.広瀬さんなんかもよく知っていると思うけれども.

荒牧:大賛成ですが,ちょっとお聞きしたいのは,静岡県には推進室というものがありますか?

宮崎:あります.山梨県もつくったのではないですか?

荒牧:山梨県はプロジェクトチーム.

宮崎:同じようなものですね.

荒牧:そこの人が実はこのフォーラムに来てくれて,非常にいい話をしてくれたのです.おたく様でも,多分そうやって,現場でよくやる人がいると思います.その推進室の中に.そういうのでもいいのではないでしょうか.

宮崎:登山組合の定義は説明会というのは来てくれて,総体的な世界遺産とはということで呼べば来て,説明してくれるのですけれども.ですから,この会でやるべきかどうかというというのも,ちょっと疑問だったものですから.今ちょっと投げ掛けてみました.

荒牧:僕は大いに結構だと思います.

広瀬:静岡県の世界遺産推進室,以前ちょっと話はしてあるのですよ.

宮崎一つにはごみごみって言うけれども,最近五合目以上はそんなごみがないんですよ.

ほとんど今放映しているのは野口さんとか富士山クラブさんとか頑張ってる山麓の不法投棄のゴミなんですよ.

それが富士山の全体のイメージになっちゃってるんですよ.

それがひとつにある,すべてではないんですけれども,五合目以上にごみが一切ないのかというとそんなこともないんですけれども,放映の90%が投棄ごみなんですよ.

山本:本当に,よその人たちに聞くと富士山がごみの山だと思っている人がものすごく多いんですよ.これは本当にマイナスだと思っています.その上,法的にもそれは撤去できない,撤去するには経費がかかる,とかいろいろな問題があるみたいですね.

宮崎:五合目から上のごみは,冷蔵庫すてるばかはいませんから,担いでいって.

そんなごみはないんですよ.

ですからあの,すぐやろうとしないで10年計画とかそういう形で徐々にやっていけばあの意識さえ変えればできるんですけれども,逆に言うと機械が入りますから,お金だけでは解決できるんですよ.したがって,極端に言えば金さえあれば何でもできちゃうんですよ.極端な言い方をするとそういうこともこういう場で話し合わなければ.できるのかできないのか.

世界遺産の中には幅広いものがありますから.

鈴木:その通りですね.あのちょっと.

荒牧:どうぞ.時間過ぎてもかまわなければ.

鈴木:すぐ終わりますから.あの弁解だけ.富士山のゴミについては,ちょっとマスコミの取り上げ方がセンセーショナルになりすぎているんで,あと,1年くらい前までは行政はほとんどタイヤ,洗濯機・電化製品などの粗大ゴミは,引き取ってくれなかったんですけれども,最近はみんな引き取ってくれるようになりました.

広瀬:まあ,これは非常に助かっています.昔は本当にわれわれ樹海から引っぱり出してきたものは自分でお金払って,持っていっていたんですよ.ずっと.

宮崎:そういう点はマスコミの力だと思いますけどね.

畠堀:ごみは富士山だけの問題ではないんですよ.林道があるところ全部です.林道があれば,山の中へ全部にごみを捨てていく.

宮崎:おっしゃるとおりです.

荒牧:いや,だけど私東京の人間だから言うんだけど,首都圏ですよ.一番悪いのは.産業廃棄物を捨てに来るのは.ここへ来るお客さんが首都圏から来るのならばそれを投げ返さなくちゃ,黙っていたらだめですよ.みんな勘違いして富士山ごみだらけだと思ってしまう.そういうことを僕は言いたいんですよ.

宮崎:そういうのは広瀬さんあたりがいってくれると,マスコミに出てね.

言ってくれるとありがたい.

私が言うとおまえら商売じゃないかといわれてしまうので.

そういう話はまだできますよね.

荒牧:そういうことでもいいし,実はもう畠堀さんからいただいたメモの中にごみの話がいろいろかいてあるから,たとえば入山料とか制限の問題とか,僕は非常にそれに興味を持っているんですけど,まあそういう話までいずれ行けばいいかなと思っているんですけど,ありがとうございました.今日は本当にそういう意味で有意義だったと思います.ありがとうございました.

                                  (以上)

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<第4回フォーラムの後に畠堀氏から提出された資料>

〈村山口登山道の意義と課題 07/3/5〉

○単なるスポーツ登山道ではなく,田子の浦から村山までの沿道に残る歴史の道であり,村山修験遺跡を訪ねる登山道である.

○歴史の道

 ・田子の浦の富士塚

 ・吉原宿・鯛屋旅館

 ・日吉浅間神社(旧東泉院=真言系の修験道)

 ・富士市立博物館の積極的な対応

 ・7基残る道しるべ

 ・神仏習合の残る村山(聖護院=本山派修験道)

 ・村山浅間神社と大日堂に残る文化財の公開

○手垢のついてない自然??自然保護の課題

 ・コケは村山古道の宝である??ロープによる誘導路

 ・高山植物帯の保護??ロープによる誘導路

 ・山野草ブームの盗掘をどう防ぐか

○修験道遺跡が未整備のまま残っている??遺跡の保護

 ・発掘調査の必要性??笹垢離跡の首なし石像

 ・保存・保護の施策??地元博物館との提携

 ・遺物の持ち出しをどう防ぐか

○登山インフラが未整備

 ・道しるべと遺跡案内の整備

 ・トイレ問題??携帯トイレ

 ・村山での宿泊??民宿新規開業の動き

 ・倒木の整理は日常的に必要

 ・人工林の中の登山道の荒廃 

  ・登山者数の制限や入山料のルールづくり

○村山の村おこし??地元との交流

 ・節分祭・開山祭・大祭・閉山祭・新年水垢離への参加

  ・ツアー客による野菜の購入

 ・村山茶の購入と販売

○参考文献『富士山 村山古道を歩く』畠堀操八,風濤社,2006

          『富士山村山口登山道跡調査報告書』富士宮市立郷土博物館,1993

           畠堀操八「1世紀で100メートル?富士山村山古道の森林限界上昇速度について」第5回富士学会発表,06年10月7日,富士宮市民文化会館 畠堀 操八

<畠堀氏資料終わり>

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○参加者の自己紹介

畠堀 操八(NPO法人シニア大樂 山樂カレッジ 事務局長)

 高校時代から広島県内の山歩きを始め,以来40数年の間,丹沢・奥秩父・南アルプス・上越・南会津の縦走・沢登り・冬山を体験.最近は原生林探査や旧修験道の再発見に興味を持っている.特技は誰でも登らせる,秘術は下り坂でも足音がしない.富士山クラブ会員,富士学会会員,日本高山植物保護協会会員.著書『富士山・村山古道を歩く?100年ぶりに甦った幻の登山道ガイド』風濤社,2006年,ashulla@jcom.home.ne.jp  

影山 秀雄(日本野鳥の会・南富士宮市支部)

 本業は染織業(織物).生まれも育ちも富士宮市で,子供の頃から自然の生き物に興味を持ち大学卒業後『野鳥の会』に入会.家業の織物の仕事の傍ら,富士山南麓の野鳥の調査・観察を続けています.野鳥の会の活動や市内に二校ある分校の子供たちの野鳥観察の手伝いをしながら,野鳥を切り口にした人と自然との好ましい関わり方を模索中.

鈴木 義和(NPO富士山クラブ)

 東京でサラリーマン生活をした後,地元に戻り富士山クラブの活動に参加. 静岡県富士市出身

宮崎 善旦(富士山表富士宮口登山組合)

 富士山の山小屋経営は,四代目で私自身,40年以上仕事として,富士山と共に歩んでいます.頂上に7月・8月の2ヶ月間,生活する事は台風,雪,水不足,高山病など自然との戦い(共生)そのものです.いままでは,登山者の誘客を目的にした観光が中心でしたが,近年は登山者の安全対策と,ゴミ・トイレなど環境問題が重点になっております.現在,富士山環境対策協議会会長,社)富士宮市観光協会会長を務めています.

広瀬 敏通(ホールアース自然学校代表・NPOホールアース研究所代表理事)

0代に長期にわたってアジア各地で個人NGOとして活躍.カンボジア内戦時には政府派遣としてタイ国境に現地事務所を開いて運営した.帰国後の1982年にホールアース自然学校開設,代表となる.個人としても火山洞窟,熱気球,辺境の探険などで多くの記録,実績を持ち,冒険好きな子どもたちの育成に尽くした.富士山,沖縄,新潟,山梨など国内各地の拠点校で職員40名,年間8万人の参加者を擁する.日本の自然学校の草分けとして,国内海外の多くの地で自然学校の仕組み作りに関わり,人材育成,地域つくり,エコツーリズムの推進に尽力する.()日本環境教育フォーラム常任理事,日本エコツーリズム協会総務理事,(特)富士山自然体験活動推進協議会代表理事など.

平野 達也(ホールアース自然学校コーディネーター)

 ホールアース自然学校でエコツーリズムの仕組みづくりを担当.また,日本エコツーリズム協会人材養成事業企画を担当し,全国へのエコツーリズムの普及を目指して活動しています.

早川 宏(富士山の文化的景観を守る会)

 富士山文化の「保全」と,文化財を活用したまちの「活性化」を図る活動をしています.建物や道などの「ハード」と,人の営みなどの「ソフト」の両面からの保全と活性化のために「吉田口登山道開山奉告祭」,「歴史探訪ツアー」,「まちづくり講演会」などの企画運営をしています.「八海巡り」や「山内神社巡り」は,点在する文化財を歴史に基づいて関連付けて面あるいは文化財群として保全することを目的としています.

山本 清龍(東京大学富士演習林)

 「小さい頃から父に連れられて菌類の採集を目的に四国の山々に登ったことが,森林科学(林学)を学ぶきっかけになったのでは」とのこと.現在,山中湖の湖畔にある東京大学富士演習林に勤務.同大学院農学生命科学研究科・助手.高知県出身.33歳.専門領域は造園学分野における公園計画および森林・環境教育.富士山北麓エコツーリズム推進協議会委員など地域の審議会,委員会の委員を務める.

荒牧 重雄(山梨県環境科学研究所)

 1957年〜2001年:東京大学地震研究所,北海道大学理学部,日本大学文理学部で主に火山学の基礎研究と教育に従事.元日本火山学会および国際火山学会会長,学術会議会員,富士山および浅間山火山ハザードマップ検討委員会委員長,現職は山梨県環境科学研究所所長.富士山世界文化遺産登録推進両県合同会議の二県学術委員会委員.火山災害の防災・減災対策や火山地域の環境保全・自然保護に関心を持っている.

 

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○フォーラムの実施要領

 フォーラムの主体は,複数回の会合及びその記録の公表・出版を行うこととする.会合の性格は,インフォーマルな座談会,懇談会,公開された講演会,パネル討論などさまざまな様式を,状況に応じて適用する.参加者の組み合わせも多様であり,地元一般住民,自然・環境保護の活動家・グループ,地元企業(観光産業を含む),市町村当局,各種団体,県の担当者,国の機関,国民会議の担当者などの中から,適当な組み合わせを拾い上げて,個々の会合を企画する.事務局は,山梨県環境科学研究所に置く.

 会議における発言は自由であり,基本的にはインフォーマルなもので,例えばある機関・団体を代表するという意識にとらわれて,発言が後ろ向きで硬直化するようなことは避けたい.したがって,この会議においてなされた発言は,ある意味で暫定的なものであり,個々の発言の内容について,後になって,厳密さをもって責任の追及がなされるようなことはないという合意が,予め参加者全員によってなされることとする.またこの会議の成果を特定の宣言やコメントとして発表することはしない.