実施報告

第22回山梨環境科学講座
 講座テーマ

         「富士山の地下水」−最新の研究から見たその起源と年齢−


  2009.05.16 13:00〜16:30 山梨県環境科学研究所 1Fホール
 

  「はじめに −軽い水、重い水」

  瀬子 義幸 〔山梨県環境科学研究所 環境健康研究部長 研究管理幹〕
  「水の同位体からみた富士山麓の地下水の流れ」 

  安原 正也 〔産業技術総合研究所 地質調査総合センター 主任研究員 〕

  「人工衛星から眺めた富士山周辺地下水の起源」

  富山 眞吾 〔三菱マテリアルテクノ株式会社 環境事業部環境調査部 副部長

  「富士山北麓の地下の様子と水の流れ」

   内山 高 〔山梨県環境科学研究研究所 自然環境・富士山火山研究部 研究員〕


講座の様子(スナップ写真)を見る

講座の流れ


13:00〜13:05 ガイダンス
13:05〜13:20 講演T
「はじめに −軽い水、重い水」          瀬子
13:20〜14:20 講演U 「水の同位体からみた富士山麓の地下水の流れ」 安原 氏

14:20〜14:30 休憩

14:30〜15:30 講演V人工衛星から眺めた富士山周辺地下水の起源」 富山 氏

15:30〜15:50 講演W富士山北麓の地下の様子と水の流れ      内山 氏

15:50〜16:30 ディスカッション(まとめ) 

環境科学講座を終えて

 5月16日(土)、本年度の環境科学講座は、生活に欠かすことのできない‘水’にスポットを当てて、「富士山の地下水」をテーマに実施しました。講師として、産業技術総合研究所地質調査総合センターの安原正也主任研究員、三菱マテリアルテクノ株式会社環境事業部環境調査部の富山眞吾副部長をお迎えして、本研究所環境研究部長の瀬子義幸研究管理幹、同じく自然環境富士山火山研究部の内山高研究員の4名が、日頃の研究の成果を参加者にわかりやすい視点からアプローチして講演して頂きました。

 まず、瀬子研究管理幹から「軽い水、重い水」というテーマで、水の年齢を推定する方法の一つであるトリチウムを利用した「カウントダウンタイマー」による測定は、地域や季節による難しさがあるという提起をしてもらいました。

  次に安原氏に「水の同位体から見た富士山麓の地下水の流れ」と題して講演していただきました。湧水の分布と湧水量がどれくらいあるのか、富士山の地下水はどこを流れるのか、水の同位体比の比較による雨水と湧水の関係、トリチウムによる地下水の年齢決定についてなど、専門的な内容をかみ砕いてわかりやすく説明してくださいました。

  続いて富山氏が「人工衛星から眺めた富士山周辺地下水の起源」と題して講演してくださいました。水の成分をダイヤグラムの型として表した視覚的にわかりやすい資料を基に、地下水の起源を評価するために人工衛星画像や地形解析を用いて地下水の経路を算定する方法によって研究した成果を発表いただきました。

  最後に内山研究員が「富士山北麓の地下水の様子と水の流れ」というテーマで、地下の地質構成や構造から考えて、古富士火山の堆積物を基盤として新富士火山の溶岩流を帯水層として地下水が流れていると推定されるという説明をしてもらいました。

 質疑応答の中で、富士吉田市の水質調査の現状についての報告もありました。参加者からは、非常に内容の濃い講演会であった、生活に必要な水についてもっと関心を持ちたい、豊富な具体的データに基づいた科学的なお話しをまとめて聞ける良い機会であったなどの感想が寄せられました。その反面、講義が専門的で難しかった、わかりやすい具体的な内容を希望したいという意見も見られたことは、今後の科学講座に生かしていく課題ともなりました。

 今回のこの講座をきっかけとして、毎日の生活に欠かすことのできない‘水’についてより一層関心を持ち、環境保全や水資源の有効活用という観点からも地域全体で取り組んでいくことを期待しています。

受講者の感想等(アンケートより抜粋)

  • 大変素晴らしい講義で感激しました。どの先生も研究された事をかみくだいてわかりやすく説明して頂きました。
  • はじめて参加させて頂きましたが、専門のお話が聞く事ができ、大変有意義でした。頂いた資料等を自分なりに活用していきたいと思いました。
  • 内容が高度であるのと、ボリュームがありすぎ。凡人には中々ついていけない。もう少しレベルを下げ、理解できるものを願いたい。
  • 同位体を応用して地下水の流れをシミュレーションの検証に使えるとは思いませんでした。最も興味深いデータがハンドアウトして頂けないのが残念です。
  • 今回は多面的な面からの研究成果の公表(発表)なので良かったと思う。
  • 興味深い講義と丁寧な質疑応答でした。ありがとうございました。研究目的と意義、また何が新しい発見なのか、もう少し判りやすく説明下さると判りやすかったです。
  • 普段、日常では知ることができない地元の地質・生態のことを精密なデータ研究に基づいた成果を提供して頂き、有意義な時間が過ごせてありがたく思っています。これからも富士山麓の事について広いテーマで教えて頂きたいです。
  • 最新の研究成果を知れるのはありがたいと思います。水の話は生活に直結しているので興味深いです。どの地区でどこの水を使っているのか?水源の水質の状態など、住民もよく知っていた方がいいと思います。いつもいつも新しい講座をありがとうございます。
  • 興味深く聞かせて頂きました。今回は富士山の地下水についてがテーマでしたが、実際の測定と理論的な考察シミュレーションから地道に取り組んでられている様子がよく分かりました。講師の方ごとにテーマ、進め方が異なりますが、一部わかりにくい内容があった。もう少しわかり易く話してもらえればありがたい。
  • 科学の目で分析すると、いろいろな事が見えてくるんですね。有意義でとても楽しい講座でした。これからは違った目で富士山を眺められそうです。
  • 借家ですが、上吉田です。井戸水使用です。その水について少しでも解ればと思ったのですが、あまりよく解りませんでした。身近な富士山についていろいろな角度からの研究成果を聞けて良かった。
  • 夫に誘われ、軽い気持ちで参加しましたが、骨のある講義で驚きました。大学と名をつけただけのことはあると、話を追うことができないながら、満足しました。卒業を目指します。質問が活発で面白かったです。
  • 富士山の湧水について、科学的な調査方法が詳しく講義され、とても勉強になりました。これらのデータから私たちは環境の変化に目を光らせ、大切にしなくてはいけないと思いました。富士山の水は自然の財産ではないかと考えました。
  • 富士山は不思議な山です。今後とも富士山に関する講座を開いていただけると有りがたいです。今回の講座はいままでいろいろと巷でいわれていた「湧水はどこからどうやって何年経っているのか。ここの湧水は本当に富士山の水なのか」等の疑問が科学的に判明できること、現代の科学では未だ解明できない事象である点がよく理解でき、高い満足感を得ました。