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『食品汚染がヒトを襲う−O157からスーパーサルモネラまで』
ニコルズ・フォックス著 高橋健次訳
草思社

 不衛生、栄養不足、貧困などによってもたらされ、かつては死の病と恐れられたペスト、天然痘などの伝染病は、今日では衛生環境の整備、医療の飛躍的な進歩により、制圧されつつあります。しかし、一方で、O157、エボラ出血熱、レジオネラ肺炎などあまり耳にしなかった感染症により多くの犠牲者が出ています。

 本書はそのうちO157、狂牛病、サルモネラ菌など食品由来感染症を取り上げ、詳細な調査資料により、その生産・流通過程に潜む様々な危険を追究しています。例えば、牛挽き肉や鶏肉が消費者の口に入るまでの過程で菌が付着する場面は無数にあります。冷蔵システムの普及は、新しい微生物の繁殖の温床を作り出し、一見清潔に見える大量生産の調理場には大腸菌が蔓延しており、色々な食品に付着し、悲劇をもたらしています。健康的と思われるしぼりたて生ジュース、電子レンジによる加熱など、日頃私たちがなんの疑いもなく行なっている調理法の危険性には、背筋が寒くなる思いがします。

 今日私たちが口にする食品は地球上のあらゆる場所から集められ、どんな季節にも食べたいもの、珍しいものが簡単に手に入ります。しかし、それは果たして必要なことなのでしょうか。その土地にあった産物を、旬の時期に食することで不都合はないはずなのに、人間の欲求は止まるところを知りません。また、伝統の調理法には、食品の安全確保が暗黙のうちに成されているのに、それを無視した画一化した方法を展開し、均衡を崩しています。つまり、これらは思い上がった人間の手による自然界の食物連鎖の破壊であり、食品由来感染症は因果応報ともいえるでしょう。

 一方で、清潔ということに過剰に反応し、抗菌製品が氾濫する日本などの現状にも問題はあります。本来人間がもっている細菌が体内から消えてしまったために、アレルギーが増えており、また、抗生物質の投与は、更に強い抵抗力を持った菌を生み出しています。

 徒に脅えたり、科学技術を否定するのではなく、自然界からの警告に真摯に耳を傾け、傲慢さを捨て、人間の食生活は自然のサイクルの中でしか存在し得ないことに立ち返るべき時が来ているように思われます。

(三澤 麻須美)

雑誌の貸出

 環境情報センターでは2月から、下記の雑誌のバックナンバーの貸出が可能となりました。貸出期間は図書と同様1人15日以内、図書と併せて5冊まで貸出ができます。なお、最新号については、情報センター内でご利用下さい。

 タイトル                出版社
「Bio−city」           ビオシティ
「Internet Magazine」  インプレス
「Mac Life」           BNN
「Outdoor」            山と渓谷社
「UNIX Magazine」      アスキー
「UNIX USER」          ソフトバンク社
「エコソフィア」             昭和堂
「ガーデン&ガーデン」          山と渓谷社
「かんきょう」              ぎょうせい
「サイアス」               朝日新聞社
「シンラ」                新潮社
「ナショナル ジオグラフィック 日本版」  日経ナショナルジオグラフィック社
「ニュートン」              ニュートンプレス
「ポカラ」                ポカラ出版
「ラパン」                ゼンリン
「リサイクル文化」             リサイクル文化社
「科学」                 岩波書店
「岳人」                 東京新聞出版社
「環境と公害」              岩波書店
「環境情報科学」             環境情報科学センター
「山と渓谷」               山と渓谷社
「省エネルギー」             省エネルギーセンター
「天文ガイド」              誠文堂新光社
「日経サイエンス」            日本経済新聞社
「廃棄物」                日報
「本の雑誌」               本の雑誌社

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