◆新着図書
『 みみずのカーロ −シェーファー先生の自然の学校− 』
今泉 みね子著
合同出版
ドイツ・ライン河畔の葡萄畑の広がる丘陵の町、メルディンゲン。本書には、この町の小学校の「自然から学ぶ」環境教育、環境活動が紹介されています。著者はフライブルグ在住の環境問題ジャーナリスト、環境インストラクター。
10年余り前、近くの山にゴミの埋め立て地をつくる計画が持ち上がったのをきっかけに、メルディンガー小学校のシェーファー校長はゴミを減らす方法を子どもたちと考えます。ゴミ捨て料金など幾つかのアイディアを出しますが、何故ゴミが自然や環境に悪いのか、本当に子どもたちがわかっているのか先生は疑問に感じました。そこで、学校で「みみずのカーロ」を飼うことにしました。ガラス張りのカーロの家を作り、その生活を観察するのですが、落ち葉やコーヒーかすと一緒にプラスティックやアルミ片などを入れておきます。すると落ち葉などはいつの間にかなくなってしまうのにプラスティックやアルミはいつまでも残っています。つまり、カーロが食べて土に変えたものと、食べられないものがあるのです。ここで、子どもたちはカーロが食べられない「よくないゴミ」を学びます。子どもたちは自然にカーロが土に戻せないものを使うのをやめ、ゴミを出さなくなりました。その結果、学校にはゴミ箱がたった一つとなり、しかもほとんど空っぽになったのです。
そして、子どもたちに影響された親たちも使い捨て容器の使用を控えるようになり、町全体が変わっていきました。1988年には州の中で市民一人当たりのゴミが最も少ない町となり、ゴミの埋め立て地計画も中止となりました。その他、市民や子どもに自分の居住地を流れる小川を世話してもらう〈小川の里親制度〉や、子どもたちが大人の仕事を観察したり手伝ったりして、物を作ることや協力することを遊びながら学ぶ〈ユーレ〉などの活動でメルディンガー小学校はヨーロッパ環境賞、パンダ賞などを受賞しています。
これらの取り組みは、決して大袈裟なものではありません。自然から学び、自然体で活動をし、その結果が環境保護に繋がっているという印象受けます。だからこそ、大人たちの心をも動かし、今も活動が続けられているのではないでしょうか。環境と向かい合う時、このように素直に、地に足をつけて、先入観なく真実を見る姿勢が大切であることを改めて気づかされました。
「自然はわたしたちをたすけてくれます。だから、こんどはわたしたちが自然をたすけるのです」というユーレの合い言葉は静かで深い感動をもたらします。
■図書寄贈
「国際ソロプチミスト山梨−芙蓉」から、『むったんの海』ほか50冊の児童向け図書・ビデオをご寄付いただきました。ありがとうございました。
■バードウォッチングコーナーへ来てみませんか!!
情報センターの一角に、バードウォッチングコーナーがあるのをご存じですか?
ここでは、さまざまな野鳥を間近で観察することができます。双眼鏡や望遠鏡を使うと、遠くにいる野鳥も手が届きそうなほど近くに見えますよ。
ぜひ、野鳥たちに会いに来てください。
○ヤマガラ
研究所でもっともよく見られる鳥のひとつです。
すずめより、ちょっと小さくて栗色の体、灰色の翼をしています。
窓にぴったりはりつけたエサ台にもやってくる大胆な鳥なので、すぐ目の前で見ることができます。
○キセキレイ
水辺でよく見られる鳥で、研究所の池にもよく現れます。浅い水の中を、おしりをヒコヒコ振りながら、細い足で軽やかに歩きます。
お腹がとてもきれいなレモン色で、チチン、チチンと澄んだ声で鳴きます。
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