関係機関からのメッセージ


おとなりから

  環境庁自然保護局生物多様性センター長
            笹 岡 達 男

■生物多様性センターとは
 1992(平成4)年5月、「生物多様性条約」がナイロビで採択され、わが国をはじめ多くの国が締結し、1993(平成5)年末に発効しました。この条約は、(1)生物多様性の保全、(2)生物資源の持続可能な利用、(3)遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分、を目的とし、生態系、種、遺伝子の三つのレベルの多様性の保全を明記するなど、自然保護全般を包括する初めての国際条約と言えるものです。

 「生物多様性センター」は、生物多様性条約のわが国における実施を推進するため、環境庁自然保護局の出先機関として、昨年(平成10年)6月に山梨県環境科学研究所のすぐ北側の県有地内にオープンしました。

■自然環境に関する調査研究の重要性
 生物多様性センターでは、自然環境全般に関する(1)調査、(2)情報、(3)標本資料、(4)普及啓発、の諸事業を実施し、それらの成果を、国、自治体、NGO等保全施策の支援、環境アセスメント、各種の調査研究などに活かすことを通じて、生物多様性の保全に寄与しようとしています。「生物多様性保全」を一言でいえば、様々な生物間の関係に着目して生態系、種、遺伝子の多様性を守ることであり、そのための基礎として、科学的知見の集積が急務です。センター及び環境庁では、生物種の分布等を調査し、保護区の設定やRDB(レッドデータブック)の作成、各種の保護対策等に活用しています。しかし、里山等の身近な自然の保全や回復を実際どのように図るのかという問題に見られるように、生物の種間関係や地域の生態系の機能に関する研究成果のさらなる蓄積が不可欠な分野が多々あることも事実であり、こうした問題の解決のためには、センターのみならず、関係研究機関や専門家が協力して取り組むことが大変重要です。このため、山梨県環境科学研究所や国立環境研究所をはじめ、自然環境に関する国や自治体の調査研究機関のネットワークを形成し情報交換等の場となる「自然系調査研究機関連絡会議」を設立しました。

■総合環境学習ゾーンについて
 首都圏に近く、自然観察や環境学習のための場や施設が多く存在する富士北麓地域は、総合的な環境学習の展開の適地として、環境庁より「総合環境学習ゾーンモデル地区」に指定されました。中でも、山梨県環境科学研究所は、環境学習スタッフを擁し、情報センターが設置されるなど、マンパワー、システムの両面で出色の環境学習拠点です。生物多様性センターとしても、こうした地域の環境学習施設と連携しながら、それぞれの特色を生かした展開を図っていきたいと考えています。

(ささおか たつお)


生物多様性センター全景


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